欧米を中心に急増している原因不明の子どもの急性肝炎。
日本でもこの可能性があるとされたケースが2021年10月以降、7人が報告されています。
現在、もっとも多くの罹患者が報告されているのがイギリスで、英国健康安全保障局(UKHSA)の最新情報によるとその数は163人にのぼっており、そのうちの11人が肝移植を必要としていることが確認されています。
また世界保健機関(WHO)も、世界20カ国で重症肝炎の子どもの患者が300人近くにのぼる可能性があると5月初めに発表しています。
今回は、多くの患者が確認されているイギリスで報告されている情報を中心に、この急性肝炎について親が子どもの変化や症状に気を付けたいことを調べました。
原因はアデノウィルス?それとも…
重度の肝疾患が増加している原因はまだ調査中であるといいますが、最も多くの患者を抱えるイギリスのUKHSAによると、アデノウイルスと呼ばれる一般的なウイルスが、パンデミック後の急増を引き起こしている可能性があるとのことです。
これまでに、罹患者から採取して検査されたサンプルの中で、最も多く検出されたのがアデノウィルスだったのです。
しかし、もともと持病もなく健康であった小児がアデノウイルスに感染して肝炎を発症することは一般的には考えにくく、他の要因についても調査が続けられています。
例えば、SARS-CoV-2やその他の感染症の既往、パンデミック時の曝露(病気の原因との接触)の減少による感受性の変化、あるいはアデノウイルスゲノム自体の変化などが考えられるといいます。
今のところ新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンとの関連性を示す証拠はありません。患者の大半が5歳未満であり、ワクチンを接種する年齢には達していないためです。
このように、原因はまだわかっていませんが、予防にはまず手洗い!です。
子どもたちにもきちんと手を洗わせるなど、通常の衛生対策がアデノウイルスを含む多くの一般的な感染症の蔓延を抑えることにはとても有効です。
子どもにどんな症状が現れるの?
英国では、黄疸と嘔吐が最も一般的な症状で、5歳未満が大半を占めています。
UKHSAの臨床・新興感染症担当ディレクターであるMeera Chand 博士は、「前提として、まずは自分の子供が肝炎になる可能性は極めて低いということを保護者の方々に知っていただくことが重要。しかし、肝炎の兆候として、特に黄疸(白目が黄色くなること)には注意し、心配な場合は医師に相談してほしい」と述べています。

一般的な肝炎の症状として、注意したい症状は以下の通りです。
- 濃い尿
- 淡い灰色をしたうんち
- 皮膚のかゆみ
- 目や皮膚が黄色くなる(黄疸)
- 筋肉や関節の痛み
- 高熱
- 気分が悪い(吐き気)
- いつも異常に疲れている(倦怠感)
- 食欲がない
- おなかの痛み
子どもの体調に上記のような変化があり心配な場合は、医療機関で受診し医師に相談してみましょう。
また前出の Meera Chand 博士は、嘔吐や下痢などの症状がある場合は、症状がなくなってから48時間経過するまで学校や保育園はお休みするよう呼び掛けています。
吐物や下痢便には多くのウィルスが含まれており、その飛沫、感染力はとても強いです。
体調が回復するまでは自宅で様子を見るようにしてくださいね。
アメリカでの発症状況は?
アメリカでも罹患者が増加しています。
米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention)は、小児における原因不明の重度肝炎109例を調査しており、このうち5人の子どもが死亡していると5/6に発表しました。
2021年10月以降に24の州と1つの準州で確認され、罹患者の90%以上が入院し、14%が肝移植を受けたといいますが、大半は回復しているそうです。
アメリカにおいてもイギリスと同様に、幼児に重い肝炎が発生するのはまだ「まれ」であるとし、保護者にはパニックにならず、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)や濃い尿、薄い色の便などの異常な兆候に注意するよう呼びかけています。
また、原因のひとつかも知れないと言われているアデノウイルスについても、アメリカの罹患者の約半数が感染していることが確認されているものの、これが病気の原因であるかどうかはまだわかっていないと伝えられています。
加えてA型、B型、C型、D型、E型など、ウイルス性肝炎の原因として一般的なものは見つかっていないとのことです。
まとめ
日本国内では、これまでに報告された7人のうちの1人からアデノウイルス、1人から新型コロナウイルスが検出されています。
原因が解明されるにはまだまだ時間がかかりそうですが、新型コロナウィルスがそうであったように、原因不明の病気がこの先これ以上拡大しないことを祈るばかりです。
特に、幼い子どもたちは自分で体調の変化に気づいたり訴えたりすることが難しいです。
この記事が少しでも知識となり、子どもたちの体調の変化を早期発見する一助となりますように。