礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第34回目は、轟悠さんが特別出演をした『The Lost Glory -美しき幻影-』を振り返ります。
こっちゃんの舞台を振り返る前に、ここはやはり「轟悠・降臨物語」を振り返っておきましょう。
専科の轟悠、各組に特別出演
いしちゃん(轟悠)は1997年~2002年の約5年弱、雪組のトップスターを務めたのち専科に異動しました。
そして長年、歌劇団理事としての職責を全うし、昨年まさかの退団の道を選ばれたわけですが…
遡れば、当時のトップスターの元にいしちゃん(轟悠)が順々に降臨、物議をかもした時代がありました。
- 2003年 花組・春野寿美礼
- 2004年 雪組・朝海ひかる
- 2005年 星組・湖月わたる
- 2006年 月組・瀬奈じゅん
- 2008年 宙組・大和悠河
でも、2000年からトップを務めていた宙組・和央ようか&花總まりの元には2006年に退団するまで結局降臨せず。(笑)
その頃すでにタカハナ・コンビとしてのブームになっていたので、入り込む余地はなかったということでしょうか。
いしちゃんとはなちゃん(花總まり)は雪組時代に1作だけトップコンビを組み、すぐ離婚(はなちゃん宙組トップ娘へ異動)してますし。(笑)
劇団の戦略でもあったのだと思います。
たかちゃん(和央ようか)が2006年に退団し、かしげちゃん(貴城けい)がいわゆるワン切りトップを務め、その後タニちゃん(大和)時代に突入した途端に、宙組に降臨。
この宙組降臨のときに他組と大きな違いがあり、これまた物議をかもしました。
それまでの4組では芝居のアナウンスを轟悠、ショーのアナウンスはトップさんが担当していたのですが、なんと宙組のときはショーもイシちゃんが開演アナウンスだったのです。
つまり、この宙組公演の主演はまるまる「轟悠」だったわけです。
そのため大和悠河トップ時代の主演作品として、この作品がカウントされないという珍事。
でも、これがこのときのタニちゃんに対する、劇団が下した評価だったのでしょう。
あ、ちなみに私はタニちゃん、嫌いじゃなかったです。
むしろ、あのキラ✨キラ✨感が大好きでした!
お歌はね、そ~と~ヤバかったです、毎回イスからずり落ちないようにシートベルトが必要なレベルでした。(笑)
でも超絶スタイルと片エクボが可愛いキラキラ光線を浴びに、けっこう観劇していましたね。
ちなみに私はこのイシちゃんが降臨した『黎明の風』という作品の大ファンでして… 今でも時々無性に見たくなり、ちょいちょいDVDで観劇します。
この2008年の宙組公演でイシちゃん降臨が全組を一巡、今回振り返る2014年、星組公演『The Lost Glory -美しき幻影-』は、6年ぶりの大劇場降臨作品となりました。
以前の降臨と違ってお芝居だけの参加でしたが、それでもファンの間では賛否両論が飛び交うことに。
私は柚希礼音ファンでしたが、100%歓迎!!派でしたね。
ま、いしちゃんが月組の下級生時代(宝塚ファンになるきっかけ、大好きだった剣幸&こだま愛時代)から見ていたので、イシちゃんに対して好意的であった部分はありますが、あの頃の星組メンバーだけでは到底観ることが叶わなかったであろう、「大人の芝居」を観ることができたのはラッキーでした。
「柚希礼音」の存在がどこか独り歩きして、下に続く当時の2-3番手であった紅ゆずる、真風涼帆との差が際立っていた感があり、轟悠という絶対的存在は当時の星組に強烈なスパイスを与え、舞台をより楽しめるものにしてくれました!
もしかしたら、そう考えていたのは少数派かも知れませんが。(笑)
『The Lost Glory -美しき幻影-』予備知識
あらすじ
第一次世界大戦後の好景気がアメリカ経済に空前の大繁栄をもたらし、アメリカが栄光の頂点にあった1929年。
ニューヨークには成功と快楽と欲望を追い求めて、様々な人びとが集まっていた。
イタリア系実業家とその妾との間に生まれたイヴァーノ・リッチは、一流建築会社 ゴールドスタイン社で会社経営の中枢を担っていた。
彼の視線の先には、ゴールドスタイン社の社長であるオットー・ゴールドスタインの姿があった。
ウォルター・P・ライマンが率いるライマン財閥の後ろ盾を得て、不屈の精神と実業家としての並はずれた才能を発揮し、いつしか “建築王”としての絶対的地位を築いたオットー。
彼はギリシャ移民としてアメリカに渡り、アメリカンドリームを実現させたのだった。
そしてオットーは更なる幸せを手に入れようとしていた。
ニューヨーク一の高層ビルの建設と、そのための新会社設立が、記者会見で華々しく発表されたのだ。
新会社の名はディアナ・ゴールドスタイン。
オットーは、ニューヨーク社交界の宝石とも呼ばれ、新しい時代の女性として羨望を集める大富豪キャンベル一族の令嬢、新進画家のディアナ・キャンベルを妻に迎えることを発表する。
そして新会社の社長にはイヴァーノが就任するとの巷の予想を裏切り、オットーはディアナの遠縁にあたる有力政治家の息子、カーティス・ダンフォードを指名。
野心に燃えるイヴァーノ・リッチにとって、経験の浅いカーティスが社長に指名されたことは受け入れがたく、オットーへの憎しみを募らせていく。
一方、ディアナの結婚を知って、彼女に想いを寄せていた美術教師のロナルド・マーティンは打ちのめされる。
ボストンの中流家庭に育ち、ディアナの初恋の相手だった彼は、財産がないために結婚できなかったが、彼女を忘れることができずニューヨークに出て来ていたのだった。
イヴァーノはそんなロナルドを利用し、彼の心にオットーへの復讐の炎を灯させる。
その復讐の炎の源は、イヴァーノの心の奥底に燃える野心の炎だった。
主な配役
オットー・ゴールドスタイン:轟悠
イヴァーノ・リッチ:柚希礼音(新人公演:礼真琴)
ディアナ・キャンベル:夢咲ねね
サム:美城れん
バーバラ・キャンベル:万里柚美
ベン:美稀千種
ディアナの伯母:毬乃ゆい
ウォルター・ライマン:十輝いりす
エマ:音花ゆり
ウィル・スミス:鶴美舞夕
ロナルド・マーティン:紅ゆずる
ムッシュ・ヴァラン:壱城あずさ
ドン:如月蓮
ディアナの伯母:白妙なつ
ハリー・エヴァンズ:海隼人
スタンリー:汐月しゅう
レイモンド・ウォーカー:天寿光希
フランシス・デュモント:音波みのり
運の良い主婦:優香りこ
ディアナの従兄:大輝真琴
ヴォーグ誌の女記者:愛水せれ奈
ヴォーグ誌の女記者:妃白ゆあ
カーティス・ダンフォード:真風涼帆
リチャード・キャンベル:輝咲玲央
スティーブ:瀬稀ゆりと
トーマス:夏樹れい
ヘンリー:十碧れいや
マイケル:麻央侑希
パット・ボローニャ:礼真琴
エヴァ:妃海風
エリオット:瀬央ゆりあ
ジョー:音咲いつき
ミラベル:綺咲愛里
ビル:紫藤りゅう
7歳のオットー:城妃美伶
伝説の靴磨き少年パット・ボローニャ
なかなか大人の役はまわってこないですね。
今回もこっちゃんの役は「少年」です。
ウォール街のすべてを掌握する、伝説の来る磨き少年 … 場面としてはあまり出番は多くありませんが、目立つ役。
第1場 Golden age in New York
幕開き、ちえちゃんの台詞で始まり、そのあとウォール街舞台中央からパット少年、いきなり現る。
株価の値上がりを大声で叫びながら。
手に持っている紙は株情報、経済新聞とかですかね。
そしてそのまま歌ったり、踊ったり。
こっちゃん、ソロパートも貰っていい感じ。
なに帽って言うんだっけ?この帽子。
ハンチング帽?
浅黒く塗った肌にフサフサ髪、そしてのっけた帽子が良く似合ってます!
やっぱ少年だわ。
でも、こっちゃん踊り出すと急に成人してしまう。(笑)
ウォール街の大人たちがガンガン踊る中、パット少年はしばらく周りでウロチョロしていて、なかなか踊らせてせてもらえないのがもどかしいですね~。
ようやく踊りに加わったと思ったら、少年がいなくなってました。www
ま、でもこっちゃんのダンスは素敵だからいいや。
場面の最後はセンターでバリバリ踊るパットくん、振り付けのせいかな… ラストのダンスは少し子どもに戻ってました~。あはは。
第7場 Ronald Takes a Chance
靴磨きの少年が良く似合うこと!
ここでも歌い踊りながら、大活躍のパットくん。
でも、初めはなんでこんな少年がウォール街のすべてを掌握してるの?って思ったけど、朝から晩まで大人たちの話し相手しながら靴を磨いていれば、そりゃ情報通になりますよね。
少年役をイキイキと演じるこっちゃん、そろそろ大人の役も見たいところではありますが、パットくんも似合っててちょっと愛おしくなる♡
でも、この少年が新人公演では真っ黒なイヴァーノ・リッチを演じるわけですよ。
あ、先に言っておきますと…
この新人公演、放送当時に録画していましたがどうやら消したらしい…。
もう観ないかな~と思って、色んな作品をポイポイしていた時期がありまして、特に新人公演とかあまり関心の組の公演はかなりポイポイと。(笑)
2回くらいはこの新人公演観た覚えがありますが… 具体的には覚えてない。><
第10場 Distubed
ここも歌わせてもらってますね。
しかも上級生たちの銀橋芝居の台詞の間に、ちょこちょこ歌うという…
場面終わりは「何かが起こるぞ… 」という不穏な空気を醸し出して去っていくパット少年。
なにげにストーリーを引っ張る、キーマンのひとりです。
by こっちゃんファンの妄想。(笑)
第13場 The Day America Died
(A)Wall Street
株価の大暴落が始まったんだぁ~と、また歌言い出します。
可愛らしい少年の面影はなくなり、シリアスな面持ちで金融危機をうたうパットくん。
人々をリードして、銀橋センターでのコーラス。
コーラスの中にこっちゃんの低音ボイスが響いている… 気がする。
(C)Wall Street
出てくるたびに、叫んでるね、こっちゃんパットくん。
でもこれが意外にわざとらしくなく、短い出番ながらに、セリフが少ないながらに、素直な「芝居心」を感じさせてくれるようになりましたね。
うん、そりゃもう研6になったんだもんね。
音楽学校からぞ~~っと一気に振り返ってきたから、いつまでも「下級生」な気がしてならないわ。
この学年でこれくらいできなきゃ、逆にアウトだな。
誰とは言わないが、何年たってもアウトな子、いるけどね。(笑)
第16場 After the Golden Age
すべてが終わって、切々と人生の、そして夢見ることの儚さを語るパット少年。
あなた、ところで、おいくつなの!?(笑)
ものすごく大人びたことを言ってますよね。
でも、アラフィフとしては、なんだかしみじみしてしまいました。
オセローの人生哲学
この作品は、物語の外からパット少年の視線を通じて、ウォール街に渦巻く大人たちの馬鹿げた狂騒曲が、いかに虚しくなにも生み出さないのかを物語っているように思います。
そして、パット少年の大人びてしまった悟りの言葉に素直に耳を傾けながら、自分の人生狂騒曲が頭の中がぐるぐるかけめぐりました…。
脚本・演出の植田景子先生が、この作品はシェイクスピアの『オセロー』をモチーフにしているとおっしゃっていましたが、なるほど、オセローですね。
ウィリアム・シェイクスピア 代表作『ハムレット』にみる人生哲学
『かもめ』といい、この作品といい、少々哲学ちっくな作品が続き、「こっちゃん」を振り返るはずが作品語りのようになってしまう自分がいます。
それにしても、いしちゃん。。。彫刻。
まとめ
少年と娘をやらせたら、ぴかいちの礼真琴氏。
そのこっちゃんが新人公演で演じた、腹の中まっくろくろすけの男を今いちど振り返りたかったのですが…、マジ凹む。
だって、次は『風と共に去りぬ』のスカーレット。
また女!(笑)
ま、仕方ないです。
次回は2014年、紅ゆずる主演で上演された全国ツアー公演『風と共に去りぬ』を振り返りたいと思います。
と思ったら、まだショーがありましたね。(笑)
『パッショネイト宝塚!』を振り返ります!!
