礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第46回目は、『鈴蘭(ル・ミュゲ)-思い出の淵から見えるものは-』を振り返ります。
こっちゃん(礼真琴)のバウ主演2作目。
初主演だった前回の作品、チェーホフの『かもめ』は、下級生の主演作としては珍しく、少しだけ歌が入った宝塚versionではありましたが、ほぼストレートプレイの作品でした。
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そして今回の2作目。
相手役には入団当初からずば抜けた歌唱力で期待されてきた真彩希帆、きいちゃんが抜擢されました!
きいちゃんは、2014年と2015年のタカスペにもコーラスで参加しています。
しかも、2014年には花組生のコーラスの中に星組から一人だけ参加という抜擢でした。
歌うまコンビ主演のミュージカル。
期待しかありません!
このバウが、こっちゃん大躍進!の「研7」ラストを飾る公演です。
『鈴蘭-思い出の淵から見えるものは-』予備知識
あらすじ
中世フランスの架空の公国でのおはなし。
伯爵家の子息リュシアンはある出来事の真相を探るよう密命を受けた。
他の公国へ嫁いだ公女シャルロットが、夫であるガルニール公を殺害したという容疑をかけられ、処刑されたのだ。
リュシアンは、シャルロットは誰かに陥れられたに違いないと考え、ガルニール公国へ向かう。
そして、ガルニール公や前妻との間にもうけた娘のエマなど、実質的な権力を握っている人物に接触していきながら真相を探る。
果たして、リュシアンはシャルロットの処刑の裏に隠された真実に辿り着き、ふたつの広告の間に起こる対立を回避することが出来るのでしょうか…。
主な配役
リュシアン:礼真琴
エマ:真彩希帆
ルイ11世:一樹千尋
マルティーヌ:万里柚美
セシリア:白妙なつ
シャルロット:音波みのり
アルノー公/リオネル:輝咲玲央
バルトロメ:漣レイラ
ロジーヌ:紫りら
ヴィクトル:瀬央ゆりあ
エルネスト:紫藤りゅう
ニコラ:拓斗れい
モーリス:朝水りょう
アデール:華鳥礼良
ロラン:凰羽みらい
ノア:彩葉玲央
マルセル:綾凰華
ヴィクトル:天希ほまれ
リュシアン(子ども時代):天路そら
エティエンヌ:極美慎
中世のおとぎばなし、宝塚version
幕開き
こっちゃん以下、キャスト板付きでの幕開き、ピンスポットに浮かぶリュシアン(礼真琴)。
こっちゃんのビジュアルは、次回作『ディミトリ』にちょっと似てますね。
同じ中世の物語だからかな。
ただし、このときはとっても立派な「モミアゲ」付です。
やっぱりディミトリのほうが … 断然、かっこいいな。(笑)
こっちゃんの進化を実感。
そして、舞台に戻り… こっちゃんの前に姿を現すエマ(真彩希帆)…かと思いきや、シャルロット(音波みのり)でした。(笑)
ふたりが踊っていると、壇上に強面のヴィクトル(瀬央ゆりあ)ときいちゃんエマが登場して、きいちゃんが下手側の階段を降りてくると同時に、はるこちゃんシャルロット(音波みのり)が上手側の階段を上っていくという演出。
こういう使い方、座付きは上手ですよね。
それにしても、なおちゃんの悪い顔がいいですね~。www
きいちゃんはイイ感じに幼いな。
子役って難しい
こっちゃんリュシアンの子ども時代を当時研3の天路そらくんが演じていますが、ちょっと少年らしからぬ立派な感じで。(笑)
シャルロットが嫁いで13年、リュシアンとの年齢差は7つと芝居の中で言っているので、当時の嫁入りの年齢から推測するに、少なくともリシュアンは10歳~13歳くらい?
決してお芝居が下手とかではないのですが、な~んか少年に見えない。
中には、もっと上級性でも「すごいな~」って思える少年を演じ人もいるので、きっとなにかこつというか、少年に見えるように演じるポイントがあるんでしょうね。
素人にはそれが何かまではわかりませんが。
ハスキーボイスにしびれる
こっちゃんの最初のお歌。
なんだかちょっと歌いにくそうなメロディーではありますが …
高音部の伸びに対して、低音出すときのどきどきかすれたようなハスキーボイスがたまりませんね~。
童顔とのギャップ。
「かつぜつ」って大事。
こっちゃんと行動を共にする、フランス王側近マルセルを演じている綾凰華、あやなちゃんの活舌が心地いいんですよね~。
当時研4?
つくづく、この人も「なんで上れず、退団しちゃったかな~」な人材ですよね。
こっちゃんとのやり取りを聞いていると、ふたりとも活舌が良いからすご~く気持ち良いです。
ついでに極美慎、当時研2のかりんちゃんもちょいちょいセリフをもらっていて、研2にしては大抜擢の役どころ。
彼女も活舌がとっても良いです。
そして、ほっぺが美味しそう。(笑)
礼真琴×瀬央ゆりあ
なおちゃんって、ほんと、下級生の頃からずっとこっちゃんと一緒に別箱公演に出てますよね。
同じ最下のポジションで端役スタート、そしてどんどんこっちゃんに役が付き、芝居で絡むことがほぼなかった時代を経て、徐々にポジションを上げて対等な立場で真正面きって芝居するポジションまで上ってきました。
しかも「別格」じゃなく、路線候補のスターとして。
別箱公演とは言え、主演のヒーローに対峙する2番手の悪役、定番のおいしい役が同期っていうのは、やっぱり見てても良いもんですね。
なおちゃんの悪役、カッコイイです。
いまとさほど変わらないな~。
こっちゃんはやっぱりまだ若さが目立ちますが、なおちゃんは見ていて今との差をあまり感じない。
今が若いの?それとも当時が老けてたの?(笑)
きっとこのときのなおちゃんと、今のなおちゃんを横に並べたら、違いが一目瞭然なのかっも知れませんが … この段階ですでにビジュアルが美しい。
いや、こっちゃんもカッコいいですよ、もちろん。(笑)
歌もまだ危ういところはありますが、たぶんここ、フラットするだろうな~と構えて聴いていると、あれ?合ってる~~~。(笑)
礼真琴×真彩希帆
歌うまコンビではありますが、きいちゃんのお芝居がちょっと大根。www
こっちゃんとのセリフのやり取りを聞いていると、その落差が激しいです。
城妃美伶ちゃんと組んだ時には感じたことがない、違和感。
きいちゃんの本来持っている落ち着き払った雰囲気と、まだ技術が追い付いていないことのギャップが大きいですね。
下級生のころからそつなく何でもこなした美伶ちゃんがトップになれず、きいちゃんはのちにトップになれた。
ちょっと話がずれてしまいますが、実は私、ひそかに月城かなと&城妃美伶コンビを見てみたかったと、けっこう真面目に思っています。
れいこちゃん(月城かなと)の相手役として、美伶ちゃんの同期でベテランのうみちゃん(海乃美月)が抜擢されましたが、だったら、れいこちゃんには美伶ちゃんタイプが似合ったのにな~と。
改めてトップ人事はタイミングと相性であることを痛感します。
ツボにはまる「けちっ!!!」
2幕の中盤、シャルロットの日記が見つかったと、エマが手に持っている日記帳を見せてくれと言わんばかりにこっちゃんリュシアンが右手を差し出して近づきます。
するときいちゃんエマが、それをかわして「だめよ、私が先に読むんだから!」と。
そこで、こっちゃんリュシアンが全力の一言。
「けちっ!!!」
これ、めちゃくちゃツボにハマります。
久しぶりのDVD鑑賞でしたが、即座に5回もリピートで見返しました。(笑)
お手元にある方は、ぜひ、久しぶりにこの全力の「けち」を見返してみて下さい.
こっちゃん、なんとも言えないカワイさですから。www
いざとなったら… 守ってやる
でもって、このあとのきいちゃんエマと二人のやり取り。
なんだかんだ、あーだこーだ、これから起こることへの不安を口にするエマちゃん。
そして最後に、エマをまっすぐ見て、こっちゃんリュシアンがひと言。
「いざとなったら … 守ってやる」
しびれる~。
おっとこ前になりましたね、礼真琴♡
はい、これも5回はリピート確定。
迫力のクライマックス
ことの真相を白状するなおちゃんヴィクトル、対峙するこっちゃんリュシアン、そして真実を知って嘆く家族たち。
こっちゃんとなおちゃん、迫真の演技に圧倒されます。
ヴィクトル「違うんだ …」
リュシアン「何が違うんだ!!!」
もうね、こっちゃんのどすの効いた声がすごい。
でもってなおちゃんの鬼気迫る、心の叫びがすごい。
そして上の方に浮かび上がる、白いドレスのはるこちゃんシャルロットの亡霊。
「可哀想な子 … もう、楽になりなさい」
そう言って両手を広げるはるこちゃん、まるで聖母マリア。
美しいわ~。
じつはなおちゃんヴィクトルも兄嫁だったシャルロットが好きだったんだね、ってことがここで明らかに。
そりゃこんな綺麗なお姉さんだったら、そうなるわ。
その直後、なおちゃんの毒を飲んだ死に方がこれまた上手い!
芸達者だこと。
簡単なマジックに悩む
ところで、毒薬をフランス王の飲むカップに入れたはずなのに、どうやってヴィクトルのカップに入れ替えたんだろう?としばし悩む。
こっちゃんリュシアンが、フランス王となおちゃんヴィクトルに持っていくトレイにカップを乗せるところまで、けっこう凝視してたんですが、カップの色が金と銀だから、すり替えるにも…。
舞台なんて、いくらでも矛盾があるまま進んで行くので、タネ明かしはなしでもおかしくないのですが、この作品にはちゃんと種明かしがあります。
Cup in Cup。
お~なるほど。
毒を盛ったカップの中にさらにカップが仕込まれていて、そのインナーカップをなおちゃんヴィクトルが飲むカップにはめ直したという仕掛け。
セリフでも「こんな単純なテで」と言っていますが、ほんと、単純だけど言われないと浮かばなかった。(笑)
素晴らしい。
え、エマが欲しいの?
最初に、フランス王からの密令を頼まれ、果たしたときのご褒美に欲しかったのは、女、たとえ亡き骸でも、と熱く国王に願い出ていたこっちゃんリュシアン。
誰もがシャルロットの亡き骸を… と思っていたのに結局、最後はエマ。(笑)
なんだか丸く収まったからいっか、な感じですが。
いや~、私的には、こっちゃんリュシアンがそこでシャルロットの思い出を抱えつつ、これから国を治めることになるエマの幸せを願いつつ、優しい背中を見せながら去って行って欲しかったですね~。www
フィナーレ
なおちゃん中心の群舞から、こっちゃんのソロになりますが、ワインレッドのフリルシャツに、黒いパンツ姿出てきたこっちゃんの雰囲気が、なんだか「赤と黒」のジュリアン・ソレルに見えました。
けっこうここのソロダンス、長いです。
曲調を変えながらまるっと1曲ソロダンスで、最後にポーズ決めて、下手に走り去って行きます。
が、この演出はイマイチですね。
あのソロダンスの空気感を保ちつつ、他の男役とのダンスへもっていってもらいたかったし、ソロダンスのあとに暗転しないまま主演の男役が袖に走ってはけていくのはいただけないかな。
なんかやり方はあったはず。
入れ違いに上手そでからきいちゃんが出てきて歌い、直後にキラキラジャケットをはおったこっちゃんが歌いながら下手から再登場。
短い歌ですが、声のハーモニーは最高でございます。
でも、お決まりのデュエットダンスだけではなく、ここで二人に歌わせるのはきいちゃんへの劇団評価の表れかと。
カーテンコールでラストに階段上、両手を広げて出てきたこっちゃん、カワイイ。
なんだろ、なんかわかんないけど、まだ貫禄がなくて、かわいい。(笑)
そして高音の歌を、やさしい美声で聴かせてくれてありがとう♡
ごあいさつ
万里柚美さんのご挨拶に続き、ユズミさんがこっちゃんを「お芝居はもちろんのこと、歌にダンスに立ち回りにと、その魅力を存分に発揮したのではないでしょうか」と紹介してくれますが、その間、隣のきいちゃんがず~っとニコニコしながらこっちゃんを見つめているのがなんともカワイイ。
こっちゃんが前へ出ていく間も、話している間も、ずっと小刻みにうなずきながら、こっちゃんの後姿を見つめてます。
娘役のかがみ。(笑)
そしてご挨拶では、こっちゃんがちえちゃん(柚希礼音)のあまり嬉しくないDNAを受け継いちゃってる件。
真面目にお話している流れでも、急にキャストに向かって「みんな、がんばるぞぉぉ」とかってね。www
あ、ちえちゃんの下級生時代よりはこっちゃん、大丈夫だと思う。(笑)
あと客席から笑いが起こるたびに、後ろのなおちゃんが「おひげ」おさえて大変そうでした。www
まとめ
この時代ものには珍しく、歴史に関係のない中世のおとぎ話でしたね。
演出家・樫畑亜依子先生のバウ・デビュー作ということでしたが、楽しく仕上がっていたと思います。
まだ貫禄イマイチですが、こっちゃんの座長としての居方が変わってきたな~と感じた公演でした。
これを観たあと、最近の『モア・ダンディズム』のこっちゃんを飛ばし観したのですが、超絶カッコよくなってて驚いた!(笑)
やっぱり7年の年月は … ながいな。
さて、次回は『こうもり』か『THE ENTERTAINER!』を振り返ります。
