2023年、花組が大劇場では30年振りに『うたかたの恋』を上演することになりました。
これまで何度も何度も繰り返し上演されてきたので、いまいち新鮮味には欠けますが、うたかたと言えば大階段上でルドルフとマリーが板ついて始まるあのシーンが目に焼き付いており、久しぶりに観られるのが楽しみです。
れいちゃん(柚香光)のルドルフは白い軍服が良く似合いそうですし、まどかちゃん(星風まどか)もマリーのイメージによく合っているので、素敵な令和版『うたかたの恋』になりそうな予感。
これまでの『うたかたの恋』を振り返る
大劇場での上演は1983年の初演(麻美れい&遥くらら)、1993年の再演(紫苑ゆう&白城あやか)の2回だけですが、別箱や地方公演でこれまでに何度も再演されてきた名作です。
あらすじ
1888年4月、オーストリア帝国の皇太子ルドルフと、身分違いの女性マリーは劇場で偶然に出会い激しい恋に落ちます。しかし、身分の違う二人の恋が成就することは容易ではなく、周囲の圧力によって2人は引き離されようとしていました。
それに加え、ルドルフは陸軍大臣フリードリヒ公爵の陰謀に巻き込まれ、皇太子としての立場を追いつめられていたのです。ついに、自らの死を決意したルドルフは、1889年1月26日、ドイツ大使館でのパーティにおいてマリーに、「来週の月曜日、旅に出よう」とその決意を告げます。
そして1月29日、雪の降るマイヤーリンクの別荘で、2人は死を遂げたのでした。
上演の歴史、キャスト一覧
こうして列挙してみると、40年間で本当にたくさんのスターさんが再演されてきたんだな~と改めて感慨にふけってしまいます。
1983年(雪組)宝塚大劇場 / 東京宝塚劇場
- 皇太子ルドルフ: 麻美れい
- マリー: 遥くらら
- ジャン・サルヴァドル: 平みち
- ミリー: 北原遙子
宝塚歌劇として柴田先生が最初に書いたのが、この雪組公演でした。
当時の公演をリアルタイムに観ていない宝塚ファンでも、この初演作品のことは知っているという人も多いのではないかと思います。
1984年(雪組)中日劇場
- 皇太子ルドルフ: 麻美れい
- マリー: 遥くらら
- ジャン・サルヴァドル: 平みち
- ミリー: 北原遙子
初演は好評をはくし、翌年の中日劇場でも再演されました。
この公演でミリーを演じていた北原遥子さんは、映画女優のように美しい方ですね。
同期には黒木瞳、毬藻えり、涼風真世、真矢みき、美人さんの多い期。
余談ですが、北原さんはこの年、その美しさゆえにTV局も絡むすったもんだの末、このあと異例の大劇場公演中に宝塚を退団、その後は期待の新人女優として嘱望されてたようですが、翌1985年8月、御巣鷹山の日航機事故の犠牲となりました。
当時は宝塚ファンのあいだでも大変な衝撃だったのを覚えています。
東京宝塚劇場でサヨナラ公演中だった、同期のしょうこちゃん(黒木瞳)やかなめちゃん(涼風真世)は、公演を務めることだけでやっとというくらい憔悴していたと言います。
1993年(星組)宝塚大劇場 / 東京宝塚劇場
- 皇太子ルドルフ: 麻路さき(宝塚)/ 紫苑ゆう(東京)
- マリー: 白城あやか
- ジャン・サルヴァドル: 稔幸(宝塚)/ 麻路さき(東京)
- ミリー: 花總まり(宝塚)/ 陵あきの(東京)
紫苑ゆう&白城あやか という美形トップコンビでの上演に期待も大きかった中、シメさん(紫苑ゆう)のアキレスけん断裂というアクシデントによって大劇場公演は2番手の麻路さき、まりこさんが大きなプレッシャーを背負って代役を務めたのを思い出します。
シメさんはかねてからこの『うたかたの恋』のルドルフを演じることが念願であるとおっしゃっていたゆえ、夢を目の前にしたこのアクシデントは当時とてもショッキングだったことを覚えています。
幸いにも驚異的な回復力で東京公演では復帰され、念願のルドルフをいきいきと演じている姿を見ることができたときには、シメさんのファンだけでなく宝塚ファンみんなが温かい「大」拍手を送りました。
そして、後々「女帝」とまで言われたハナちゃん(花總まり)は、雪組トップスター、一路真輝の相手役として異動となったため大劇場公演のみの出演でした。
1994年(星組)全国ツアー
- 皇太子ルドルフ: 紫苑ゆう
- マリー: 白城あやか
- ジャン・サルヴァドル: 麻路さき
- ミリー: 陵あきの
アクシデントを乗り越え、東京公演で念願のルドルフを演じたシメさんでしたが、翌年の全国ツアーでもこの公演が再演されることになり、ご本人にとってもファンにとっても嬉しい公演になったことでしょう!
以降、この『うたかたの恋』は大劇場・東京宝塚劇場の舞台には登場せず、全国ツアーや別箱公演が続くことになります。
1999年(月組)全国ツアー春 / 秋
- 皇太子ルドルフ: 真琴つばさ
- マリー: 檀れい
- ジャン・サルヴァドル: 汐美真帆
- ミリー: 花瀬みずか
見映えは最高のルドルフとマリーでしたが、お歌が…。(苦笑)
でも歴代の主演コンビの中ではピカイチのビジュアルで、眼福です。
2000年(宙組)全国ツアー
- 皇太子ルドルフ: 和央ようか
- マリー: 花總まり
- ジャン・サルヴァドル: 湖月わたる
- ミリー: 華景みさき
宙組初代トップスター姿月あさとの退団に伴い、和央ようか&花總まりコンビのプレお披露目公演として、この作品で全国ツアーを周りました。
この頃のたかちゃん(和央ようか)はとにかく化粧がマズくて、この公演のポスターもあまり見栄えが良くなかったのですが、舞台ではいくぶん「観れた」かな。(笑)
ハナちゃん(花總まり)のシンプルな美しさは健在。
その衰えない容姿とスタイルは、当時「アンドロイド」とさえ言われていましたね。
研2でシメさん(紫苑ゆう)のお披露目公演『白夜伝説』のミーミルに抜擢され、目の見えない妖精さんを初々しく演じていたハナちゃんが、未だに鮮烈に記憶に残っています。
2006年(花組)全国ツアー
- 皇太子ルドルフ: 春野寿美礼
- マリー: 桜乃彩音
- ジャン・サルヴァドル: 彩吹真央
- ミリー: 桜一花
歴代ダントツの歌唱力で聴かせてくれた春野寿美礼ヴァージョン。
個人的にはルドルフ役者ではないな、という印象でしたが、完成度は高かったですね。
2013年(宙組)全国ツアー
- 皇太子ルドルフ: 凰稀かなめ
- マリー: 実咲凜音
- ジャン・サルヴァドル: 朝夏まなと
- ミリー: すみれ乃麗
凰稀かなめヴァージョンのルドルフは、それはそれは神々しい美しさでした。
芝居心のあるコンビですし、ヴィジュアルの美しさと総合すると、このコンビの作品はけっこう好きですね。
2018年(星組)中日劇場
- 皇太子ルドルフ: 紅ゆずる
- マリー: 綺咲愛里
- ジャン・サルヴァドル: 七海ひろき
- ミリー: 音波みのり
二人のヴィジュアルは嫌いじゃないのですが、二人ともセリフ回しの癖が強くて残念です。
黙って寄り添っている二人の姿は高得点!なのですが …(笑)
2023年(花組)宝塚大劇場 / 東京宝塚劇場
- 皇太子ルドルフ: 柚香光
- マリー: 星風まどか
- ジャン・サルヴァドル: 水美舞斗
- ミリー: 星空美咲
そして2023年、30年ぶりに大劇場の舞台に『うたかたの恋』が帰ってきます。
れいちゃん(柚香光)と、まどかちゃん(星風まどか)が新たな時代の『うたかたの恋』を見せてくれるのか、今だからこそのクラシカルな『うたかたの恋』を見せてくれるのか、楽しみですね。
『エリザベート』でルドルフを演じた経験が、どう役作りに生かされるのかも見どころではないでしょうか。
ちなみに『エリザベート』でルドルフを演じ、この作品で主演を経験したスターさんは、和央ようか、凰稀かなめがいます。
悲劇の舞台マイヤーリンク
オーストリア帝国、ハプスブルク家の皇太子ルドルフと、身分違いの恋に落ちたマリー・ベッツェラの二人が心中した場所として知られるのがマイヤーリンクの森。
この森にあったハプスブルク家の別荘が悲劇の舞台となった場所です。
マイヤーリンクを訪ねてみました
歴史好きな私は、この『うたかたの恋』や『エリザベート』など、ハプスブルクの物語に関心があり、かつてマイヤーリンクの森を訪ねたことがあります。
たしかウィーンからバスで行ったと記憶していますが、森の入り口に降り立った時、悲劇の舞台とは言え物語の中に入り込むような気持でワクワクしたのを覚えています。
この森を進んで行くと、このマイヤーリンク事件の後、皇帝の命によって修道院となった建物が残っています。


教会内部と、事件に関する展示や、ポストカードなどが販売されている小部屋が見学者用に公開されています。
ここでしか見ることのできないルドルフ皇太子とマリーの当時の写真なども沢山展示されており、関心のある方にはぜひ訪れてみてほしいスポットです。
ただ、交通手段がとっても不便だった記憶がありますので、できればウィーン発着の現地ツアーに参加したほうが良いかも知れません。
日本からも予約できるツアーがいくつかあると思います。
はやくコロナが終息して、海外旅行を自由気ままに楽しめる日々が戻りますように… 。
まとめ
『うたかたの恋』はこれまでにも歴代のスターさんが「憧れの作品」として挙げてきた、ザ・宝塚といってもよい作品。
れいちゃんとまどかちゃんがどんなルドルフ&マリーを見せてくれるのか楽しみですね。
ただ、この作品は主要な役が少ないのが難点。
今回は小柳先生による新演出になるようなので、その辺りを補う虎の巻を用意しているのか期待しましょう!
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