MONOLOGUE
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イギリス

イギリスを旅する【1】嵐が丘とピーターラビットの舞台を尋ねて①

ハワース

今回の旅は3泊5日の弾丸ひとり旅。

旅の目的はふたつありました。

ひとつはイギリスの女流作家エミリー・ブロンテの生涯唯一の小説『嵐が丘』(原題:『Wuthering Heights』1847年)の舞台となったハワースのMoore(ムーア)を歩くこと。

そしてもうひとつが、イギリスの絵本作家ビアトリクス・ポターの児童書『ピーターラビット』の舞台である湖水地方を訪ねること。

限られた短い時間での旅なので、東京・羽田空港から飛び立ち、ロンドン・ヒースロー空港に降り立ったその足でロンドンを素通りしてそのままイングランド北部の宿泊地、リーズへ向かいました。

リーズ Leeds

リーズ・イギリス

移動は長距離列車で

ロンドン中心部の kings Cross 駅からリーズまでは電車で約2時間半。

イギリスに暮らしていたころには、よくコーチ(長距離バス)を使ってのんびり長距離旅を楽しんでいたものですが、コーチだとリーズまで約4時間かかってしまいます。

今回は夕方にロンドンに到着し、そのままリーズへの移動だったため、残念ながら選択肢は鉄道のみ。

季節は7月中旬でした。

湖水地方やイングランド北部を観光するにはベストシーズンです。

多少の混雑は覚悟していたものの、30分に1本の電車があるしと余裕をかましていたところ、甘かった。

どの列車も予約でいっぱい、指定席なんて取れるわけもなく、仕方なくデッキに設置されている背もたれによっかかり、2時間半の長距離を移動する羽目になってしまいました。

しかも、車内のエアコンは故障中ときたもんだ。

ま、ヨーロッパではごく当たり前のできごとだったりはします。(笑)

12時間の長距離フライトを終えてお疲れモードの中、滝のように汗を流しながら、車窓からの風景を楽しむ心の余裕などないまま更に2時間半。

おかげさまで、なんともキツイ旅の始まりになりました。

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リーズはゲートシティ

リーズ・イギリス

リーズの駅に到着した時には、すでに21時を回っていました。

とはいっても、この時期のイギリスはサマータイム真っただ中。

この時間になってもまだ明るいので助かります。

リーズ・イギリス

宿泊するホテルは、駅から歩いて数分の場所にある4つ星ホテル。

ま、4つ星と言ってもヨーロッパ基準でのことなので、けっこう普通な感じなのですが (笑)、この時は少々贅沢にダブルルームのシングルユースにしていたので、3泊だけ、しかも到着して1泊目はチェックインして寝るだけ…(笑) という短い滞在ではありましたが、広々としたお部屋でゆったりと過ごすことができました。

リーズ・イギリス

ただ、sora にとってリーズの街はあまり魅力のある街とは言えず、目的地へのゲートシティという位置づけで、観光するというよりは、ショッピングを楽しむイメージ。

もっと時間に余裕を持って訪れることができれば、また違った街の魅力も発見できるかもしれませんね。

リーズ・イギリス

街並みは歴史を感じさせる建物が並び、美しいです。

いつかまた、ゆっくりと。

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ハワース Haworth

ハワース

英国文学の名作『嵐が丘』

その物語の舞台となっているのがここ、ハワースです。

果てしなく続く荒野、傍若無人に吹きすさぶ風、そこには『嵐が丘』の世界がそのままに広がる大地があります。

この荒廃的な雰囲気に妙に心惹かれていた私は、ずっと以前からこの地を訪れたいと願っていました。

留学中にはなかなか機会がありませんでしたが、ついに念願叶い、この地にやって来たわけですが、そこには想像をはるかに超えたムーアの厳しさが待ち受けていたのでした…。

小説『嵐が丘』とは

1847年に刊行された小説で、世界で10本の指に入ると言われている名作です。

この作品が評価されるようになったのは、作者であるエミリー・ブロンテが若くして30歳で他界した後2年ほど経ってからでした。

この名作はこれまでに、多くの国でドラマや映画、舞台化されてきました。

宝塚歌劇団でも1969年に月組(主演:古城都)、1997年に雪組(主演:和央ようか)、1998年に宙組(主演:和央ようか)で上演しています。

宝塚歌劇団の公式ホームページには、1999年以降の公演しか当時の公演情報が掲載されていませんが、スカステでは度々再放送されていますので、いつか機会があれば是非、ご覧になってみて下さい。

 あらすじ

ロックウッドという人間嫌いの紳士がヒースクリフと義理の娘キャシーが暮らすヨーク シャの荒野に立つ屋敷〝嵐が丘〟を訪ねて来る。

しかし、ロックウッドはそこでキャサリン・リントンと名乗る亡霊を目撃して恐怖を覚える。

そして物語は、キャサリンやヒースクリフと共に育った召使い・ネリーの回想によって「嵐が丘」に起きた出来事が語られていく。

ヒースクリフはかつての「嵐が丘」当主であったアーンショウがリヴァプールで拾ってきた孤児で、当主の息子ヒンドリーからひどい虐めにあっていた。

そして当主亡き後は下働きになってしまう。

そんな中で、唯一、屋敷の娘キャサリンだけはヒースクリフの味方で、二人はともに過ごすうち深い愛情で結ばれていく。

しかし、様々な出来事を通じてキャサリンは変わっていき、孤独を感じたヒースクリフはやがて「嵐が丘」を飛び出し姿を消してしまう。

その後、ヒースクリフへの思いを抱えながらも、良家スラッシュクロスの御曹司エドガーと結婚して平穏に暮らすキャサリン。

数年後、莫大な財産を得たヒースクリフがふたたび「嵐が丘」のキャサリンのもとへ姿を現す。

そこから「嵐が丘」とスラッシュクロス、世代を跨いだ壮大な復讐劇が幕を開けるのだった。

ハワースへの道

リーズ・イギリス

リーズからハワースへは、まず鉄道でキースリーまで行き、そこからバスへ乗り換えます。

あいにくの(いや、雨女にとってはいつものように…笑) どんより小雨が降るお天気にがっかりしつつも、念願のハワースへ行くことにワクワクMax。

キ―スリー

朝早くにリーズを出発してキースリーの駅に到着したのが8時半頃で、そこから少し歩いてバス停へ移動しました。

雨が降り続くお天気のせいなのか、はたまた朝の時間帯のせいなのかは分かりませんが、バスセンターには人影もまばら。

誰かにハワースへの行き方を訪ねるにも、その相手がいないといった状態でした。

なんとか自力でハワースへ向かうバスに乗車、バスに揺られること約30分。

なんとなく目的地のハワースに近づいているような風景。

ハワース・イギリス

でも、いったいどこで降りたら良いのやら見当がつかず、キョロキョロ、そわそわしているうちに数人いた乗客もどんどん減ってゆき…。

ついに最後のひとりが降りるとき、さすがに焦ってドライバーさんに聞いてみました。

そうしたら、なんと、そのバス停で降りれば良いことが判明。

ギリギリセーフ!

もっと早くドライバーさんに聞けばよかっただけなんですけど。(苦笑)

ハワース

このとき一緒に降りた最後のひとり、若い女の子でしたが、彼女がなんと『嵐が丘』の作者であるブロンテ姉妹(作者は4姉妹のひとり)の記念館で働いている留学生という偶然。

とても親切な女の子で、彼女が町の中心部まで一緒に案内をしてくれました。

ただ、時間は朝の9時半前。

お店やミュージアム、INFORMATIONなどは、すべて10時オープンなので、どこも閉まっていました。

仕方なく周辺をブラブラしながら、しばし写真撮影タイムです。

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果てしない荒野への入り口

ハワース

周辺をブラブラしながら教会までやってくると、「ムーアはこちら⇒」の案内板を発見!

とりあえずその方向へ進んでみることに。

ひたすら緑が広がるのどかな風景に「ムーアはいったいどこ?」

ハワース

いや、きっとこの先に荒野が広がっているはず!と、とにかく進んでみましたが、結局その先にムーアへの道を見つけることができず突き当たってしまったので、ここはひとまず来た道を引き返すことに。

ハワース

相変わらず降り続く雨で足元はぬかるみ、すでに靴はグショグショ。

やはりINFORMATIONで地図を手に入れないと無理か … と思いつつ時計を見ると、ようやく9時半を回ったところでした。

10時まで30分も待つのはもったいないな~と悩んでいたところに、日本人の団体客が到着、彼らが添乗員さんの後ろに連なり一斉にある方向へ進んでいくのを目撃!

ハワース

もしや … ムーアへ!?

期待しつつ同じ方向へ進んでみたところ、いくつかムーアを示す看板を発見したのです。

どうやら、このまま進めばOKな雰囲気。

団体客は限られた時間の中で「ちょっとだけ散策」だったらしく、すぐに引き返していきましたが、私はいよいよ念願のムーアへのなんとも「過酷」な道のりのスタートラインに立ったのでした。

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歩いても、歩いても、、、

ハワース

目指すは「Top Withins」。

看板には漢字まで書かれていましたが、イギリスは基本 km よりも mile の表示が多いので、まったくもって距離感がつかめず。(笑)

かつて2年もイギリスで暮らしていたくせに、km と mile の換算なんて覚える気がなく。

でも、とにかくとっても遠いことは分かりました。www

ちなみに帰ってから確認したところ 3.25mile = 5.2km くらいでした。

ハワース

人っ子一人いない道のりを、ときどき現れる看板だけを頼りに、ひたすら歩き続けます。

雨はさらにひどくなる一方で、実のところ歩き始めて10分くらいのところで既に心が折れそうになりました。

ハワース

降りしきる雨の中で孤独と闘いながら、ひとり黙々と歩き続け、折れそうになる心を支えていたのは、「今回はここへ来るために、イギリスまで来たんだから!」の思いだけでした。

はじめは心の中でつぶやいていたのが、次第に声を出して自分に言い聞かせるようになり、30分もたったころには、あまりの過酷さに無言。

ハワース

そして、無心。

次第に霧も出てきて、雨が止む気配は皆無です。

誰もいない荒野にただ一人。

ハワース

気づけば歩き始めて2時間が過ぎていました。

目的地は果てしなく…。

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 引き返す勇気と葛藤

ハワース

錆びついた看板に不安を抱きつつ、もう一度自分に言い聞かせます。

「ここへ来るためにイギリスへ来たんだから!」

不思議と怖さはありませんでした。

あまりにも「人」がいなさすぎる世界だったからでしょうか。

ハワース

ここでバッタリ倒れても、きっと誰にも気付かれることなく消息不明になってしまうんだろうな、という思いはありましたが …。

降り止まぬ雨、延々と続く荒野の足元は恐ろしく悪い。

霧もどんどん深くなってきました。

ハワース

この辺りに来ると、次第に道らしき道がなくなり、ついには進む道を確認できなくなってしまいました。

2時間以上歩いて、まさかの足止め。

しばし立ち止まって悩む。

ハワース

でもやっぱり、どう考えても地図なしでこれ以上進むのは無理だとの結論に至り、引き返すことを決断しました。

とはいえ、とっても名残惜しかったので、しばしその場に立ち止まったまま思う存分、周りに広がる風景を目に焼き付け、、、

そして何故か無性に歌いたくなり、誰もいないことを良いことにその場で大声で歌いました!

ハワース

その時の歌は忘れもしない、ミュージカル「エリザベート」の♪私だけに。(笑)

そしてそのまま「♪私だけに」を熱唱しながら、来た道を引き返し始めたのでした。

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 人の心は弱いもの …

引き返していたはずの足が止まるのは、そのすぐあとのこと。

幸か不幸か、引き返す道すがら「別ルート」らしき看板を見つけてしまったのです。

そうなると人の心は弱いんですよねぇ …

懲りもせず、思わずその「別ルート」らしき方向へ歩き始めてしまう sora でした。

こちらのルートでもやっぱり「人」に会うことは皆無でしたが、羊の群れがこちらを眺めながら怪訝そうなお顔をしています。

ハワース

「なんでこんなところに人が歩いてるの?」とでも言いたげな羊たち。

でもたぶん、朝晩には羊飼いさんが彼らを連れに車でここへ来るんでしょうね。

野生の羊さんには見えませんでした。

ともあれ、sora はひたすら歩き続けるしかありません。

気が付けば周囲はヒースクリフの花に囲まれていました。

ハワース

ヒースクリフとは、『嵐が丘』の主人公の名前にもなっています。

なんか、雰囲気出てきたぞ。

でも、どこまで行けば目的地へたどり着けるのか…。

自分が今何処にいるのかなどわかる術もなく、目的地のどの辺りまで進んでいるのかさえさっぱりわかりませんでした。

久し振りに見つけた案内板はボロボロ、とにかく矢印の方向へ進みます。

ハワース

この荒野が広がる風景の中にポツリと、たったひとり存在している自分がとても不思議な気分になってきました。

止まない雨。

深くなる一方の霧。

激しくぬかるむ足元。

衣服までずぶ濡れになりながら「無」の状態で歩き続けていた気がします。

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次回へ続く

当たり前ながら、ちゃんと出発前にインフォメーションで地図や情報を入手してから、ムーアへ進むべきでした。

わずか30分の時間を惜しんで無謀な冒険を始めてしまったばかりに、想像を遥かに超えるサバイバルになってしまったのです。

まだまだこのムーアの孤独で過酷な旅は続きます。

無事に生還できたから良かったものの、一歩間違えば本当に遭難していたであろう危険な冒険。

みなさま、決して真似をしないでくださいね。(苦笑)

さて、sora のムーアの冒険はどうなりますことやら … 次回へと続きます。