ずいぶん昔、まだ sora が宝塚歌劇と出会う前、(というか、まだ生まれてないとき )に、イギリス文学『嵐が丘』が宝塚歌劇で舞台化されました。
そして時は流れ、1997年(雪組)、1998年(宙組)、ともに和央ようか主演で再演されたわけですが、sora はこの時に初めてこの作品と出会いました。
TAKARAZUKA SKY STAGE
嵐が丘-エミリー・ブロンテ作「嵐が丘」より-(’97年雪組・バウ)
とても有名な文学作品なので、もちろんタイトルくらいは知っていましたが、読んだことはなかったのでストーリーはあまり知りませんでした。
この宝塚の舞台作品に触れ、小説を読み、主人公ヒースクリフやキャシーの異常性と、全編に漂う荒廃的な雰囲気に妙に心惹かれ、、、
いつしかこの「嵐が丘」の舞台であるイングランド北部に位置するハワースへの思いが強くなっていきました。
当時、舞台でヒースクリフを演じていたタカちゃん(和央ようか)が、最後の最後までニコリともしないカーテンコールに、結構なカルチャーショックを感じたことを覚えています。
映像に残っているのは千秋楽?ですかね、しばらく観ていないのではっきり覚えていませんが、ようやく一番最後になってニヤリッと口元でニヒルな笑みを浮かべていた気がします。
2年もイギリスで暮らしていたのに、その時になぜたっぷりと時間を使ってハワースへ行かなかったのか?
なぜならば、イギリス国内はもとより、ヨーロッパ諸国にも行きたいとこだらけだったから。(笑)
さて、念願のハワースを訪れたものの、準備不足がたり Moore の洗礼を受けた sora の旅。
目的地はいずこ … 。
果てしなきムーアへの孤独な旅路
とにかく目的地へ近づいていることを信じ、ひたすら前へ前へと進むしかない孤独な旅路。
周りは静寂の世界。
手に握りしめた傘に雨音がぶつかる音と、ぬかるみの中を進むグショグショになった靴から聞こえるピチャピチャという自分の足音しか聞こえません。
道閉ざされ …
無心になって歩を進めていくと、周囲の草の背丈がどんどん高くなってきました。
その草をかき分け道なき道を進みます。
その途中で、「ブロンテの滝と橋」の案内板を見つけ、ひとまずそちらへ向かって歩いてみることに。
そして険しい道を進んでいくと、かすかに水の流れる音が聞こえてきました。

その音を頼りにさらに進んで行くと、ささやかな水流の小川を発見。
こんな自然のど真ん中にもかかわらず、茶褐色に濁った水。
なんでだろう?
この小川を辿って行けば、滝の方へ近づくと期待したのですが、その先は、ゆうに胸の高さまであるような草が生い茂り、道を確認することすらできない状態。
仕方なく、引き返すことにしました。
このまま遭難するわけにはいかない …

いったん分岐点まで戻り、今度は本来の目的であった「Top Withens」を目指して進みます。
先ほどよりは道らしいものがありましたが、これまたぬかるみとの過酷な戦いで。
さすがにここまで来た頃には、疲労と不安とが入り混じってイライラモード全開!

足元の悪さにいちいち腹が立ち、独り言をブツブツ言い出す始末。(笑)
人どころか、もはや動物や虫にすら出会わないこのムーアのど真ん中で、よくぞひとり孤独に耐えて頑張ったもんです、ほんとうに。
遭難するかも …
このとき、かつて留学中に訪れたペンザンスでの果てしない過酷な旅を思い出していました。
このときのお話はまたいずれ紹介しますが、けっこういろいろ経験しています。(苦笑)

誰ひとり sora がハワースに来ているなんて知らない状況のなかなので、遭難しても絶対に発見されないでしょうね。
冗談では済まないことになり兼ねなかったことを、とっても反省した sora なのでした。
とにかくひたすらに深い茂みや草原を歩いて来ましたが、どれだけ歩いても目的地に辿り着く気配なし。

ここまで何時間歩いたのでしょうか、正確にはもう覚えていませんがたぶん3時間以上は歩き続けていたはずです。
前方に広がる深い霧。
ここまで来ると、さすがに終わりの見えない旅に体力と気力にも限界がやって来ました。
ついに、決断の時です。
目的地を見ぬままに、ここでハワースの町へ引き返すことを決断しました。
でも、ここまでの過酷な旅の証を!と考えた sora がこのときしたことは …

せめて自分を写真に映り込ませる!(笑)
人って、追い詰められると、わけのわからんことを考えるもんです。www
因みにこのとき履いていた靴は、即日、廃棄処分となりました。。。
記憶を頼りに無事、生還
戻ると決めたら、とにかく来た道をひたすら引き返すだけではあるのですが、これがまた苦しい数時間。
すでに3時間以上、ぬかるみや砂利の道なき道を歩き続けて来たので、すでに足の痛みはピークに来ていました。
とにかくすべてにイライラ。

小さな石ころひとつにも当たり散らす始末でした。(苦笑)
数時間前には、ご機嫌で歌いながら歩いていた自分はもはや記憶すらありません!
でも、写真はちゃっかり撮り続けているところが sora らしいと思ったりもします。(笑)

来た道を戻るだけのはずが、人間の記憶とは曖昧なもので、反対側からの景色って意外と覚えてないんですよね。
分かれ道に遭遇する度に「どっちに行けばいいんだっけ?」と悩みながら進みます。
でも、確実に町に近づいているという安心感。

足が痛くてイライラしてはいましたが、久し振りに自分以外の生き物に遭遇して感動したり、綺麗な花を「キレイ」と思える気持ちの余裕も徐々に回復!
でも、結局来た道からは外れてしまったようです。
見覚えのない景色にドキドキしながら、帰巣本能だけを頼りに歩き続けること2時間半。
なんとか無事、ハワースの町へ戻って来ることができました。
ハーワースからSLの旅
正味5時間半もの孤独なムーアの旅。
地図もないまま、降りしきる雨の中傘をさしながら深まる霧とぬかるんだムーアの大地を進むという無謀な冒険は、目的地へたどり着けずに終了。
いつかまた、お天気が良い日に、今度はちゃんと地図を手に「Top Withens」へ行ってみたいと思いつつ、ヘロヘロになった足を引きずりながらハワースの鉄道駅へ直行。

往路はキースリーからバスを利用しましたが、ハワースからの復路はキースリーまでのSLを利用しました。
このSLはハワースとキースリーの間を夏期のみ運行されています。

車内はとってもレトロで良い雰囲気。
BBCドラマ「名探偵ポアロ」でよく見る鉄道の風景が思い浮かんでくるようでした。
日本でも大井川鉄道のSLに乗ったことがありますが、鉄道発祥の国であるイギリスでSLに乗車するのはやはり気分が違います!(笑)

本当は復路でキースリーにも立ち寄り、少し観光する計画を立てていたのですが、もはやそれどころではなかったので、そのまま鉄道を乗り継いで宿泊地であるリーズまで戻ったのでした。
次回へ続く
5時間以上過酷なウォーキングの末に、目的地にかすりもしなかったという悲しい結末を迎えた sora の『嵐が丘』でしたが、ま、これも貴重な体験ってことで。
でも、何度も言いますが、地図なし悪天候の嵐が丘 … 決して真似はしないでくださいね!(言われなくても誰もしないわな …苦笑)
さて、過酷なハワースの旅の翌日は、うってかわってメルヘンの世界へ!
リーズから湖水地方のウィンダミアへ日帰り弾丸ツアーを決行しました。
結局、いつもムチャしているな。(笑)