
コップに氷を入れると、氷は水に浮きます。
これは毎日見かける光景ですが、実は「氷が浮く」というのは自然界ではわりと珍しい性質です。
多くの物質は、固体(かたい状態)のほうがギュッと詰まって重くなり、液体のほうが軽くなります。
ところが水は逆で、氷になると“少しふくらむ”ため、同じ体積なら氷のほうが軽くなり、水に浮きます。
この記事では、①なぜ氷はふくらむのか、②それが地球にとってどれほど大事か、③日常で見える小さな実験まで、やさしく説明します。
「浮く」とはどういうこと? まずは「密度」
難しい言葉に感じるかも知れませんが、密度とは「同じ大きさの中に、どれだけ中身が詰まっているか」という意味です。
・中身がたくさん詰まっている → 重い(密度が大きい)
・中身があまり詰まっていない → 軽い(密度が小さい)
水より密度が小さいものは浮きます。水より密度が大きいものは沈みます。
氷は水より密度が小さいので浮く、というわけです。
氷がふくらむ理由:水の粒が“並び方”を変える
水はとても小さな粒(分子)が集まってできています。
温かい水の中では、その粒は動き回りながら、わりと自由な距離感で集まっています。
ところが冷えて凍ると、粒どうしが“きれいな並び”を作ろうとします。
その並び方が、少し隙間(すきま)が多い形になります。
イメージとしては、
・液体の水:人が自由に動ける満員電車(隙間が少ない)
・氷:人が整列して立つ(きれいだが、間に小さな隙間ができやすい)
この「隙間」が増えることで、氷は同じ量でも少し体積が大きくなり、密度が下がります。
だから浮きます。
氷が浮くと、 地球の“生き物”を守る?
ここが雑学として一番おもしろいポイントです。
もし氷が沈む世界だったら、冬になるたびに湖や川の氷は底へ沈み、そこからさらに凍っていきます。
すると水の中がどんどん凍り、生き物が生き残れなくなる可能性が高くなります。
しかし現実は、氷は浮きます。
水面に氷のフタができると、その下の水は外の冷気から守られ、いきなり全部が凍りにくくなります。
つまり、「氷が浮く」ことは、冬の水の中に“安全な空間”を残す仕組みになっています。
水面の氷は寒さを通しにくく、下の水の温度変化をゆっくりにします。
これは水の世界の“断熱材(だんねつざい)”のような役割です。
実は水は、4℃あたりで一番重くなりやすい
もう一つ面白い性質があります。
水は、0℃に近づくほどずっと重くなるわけではなく、だいたい4℃あたりで最も密度が大きくなりやすい、と言われます。
そのため、寒い季節に湖の水が冷えると、上のほうの水が冷えて下に沈み、やがて4℃付近の水が下に集まるような動きが起こります。
そして表面だけがさらに冷えて0℃に近づくと、今度は凍りやすくなり、表面が氷になります。
結果として「底は比較的安定し、上が凍る」という状態ができやすくなります。
これも生き物にとって大きな助けになります。
家庭でできる小さな観察:氷が溶けると水位は増える?
コップの水に氷を入れて、氷が完全に溶けたら水があふれる気がする人もいるかも知れません。
でも多くの場合、ほとんど変わることはありません。
理由は、浮いている氷は「押しのけた水の重さ」と釣り合って浮いているからです。
氷が溶けて水になっても、その重さは同じなので、水面の高さは大きく変わりにくいのです。
(ただし、氷の中に空気が多い、塩分がある、氷の上に水がのっているなど条件で変化することはあります。)
この観察は、お金をかけずに「浮力(ふりょく)の考え方」を体感できる面白い実験です。
暮らしの雑学:凍るとペットボトルがパンパンになる
水は凍ると少しふくらみます。
そのため、ペットボトルに水をパンパンまで入れて凍らせると、膨張でボトルが変形したり、割れることがあります。
冬に屋外に置いた飲み物が破裂することがあるのも、この性質が関係します。
実用的には、凍らせたいときは、少し空間を残すのが安全です。
まとめ
氷が水に浮くのは、凍るときに水の粒の並び方が変わり、隙間が増えて密度が小さくなるからです。
この性質のおかげで、湖や川は表面が凍っても、下の水が守られ、生き物が生き残りやすくなります。
身近すぎて見落としがちですが、「氷が浮く」は地球にとって重要な“幸運の仕組み”です。
次に氷を見たときは、ただ冷たいだけではなく、自然の不思議を思い出してみてください。


