
自転車のチェーン、ベランダの手すり、工具の刃先。気づくと増えている赤茶色――サビ。
サビは「汚れ」ではなく、鉄が酸素と水のある環境で起こす電気化学反応の結果です。
反応の仕組みを少し知るだけで、なぜ“濡れたまま放置”が危険なのか、なぜ“ステンレスでもサビる”のか、そして「亜鉛が身代わりになる」不思議な防錆まで、一気につながって理解できます。
サビは「水+酸素+電気の流れ」で進む
鉄のサビ(腐食)は、ざっくり言うと次の条件で加速します。
- 水(湿気):イオンが動ける“通り道”になる
- 酸素:反応の相手として使われる
- 電気の流れ(局所電池):金属表面のわずかな差で起こる
金属表面は完全に均一ではありません。
傷、汚れ、酸素の濃淡、塩分などがあると、同じ鉄なのに一部が“溶けやすい場所”になり、そこで鉄がイオンとして溶け出しやすくなります(局所的な電池のように振る舞う)。
水があるとこの反応が回りやすくなります。
なぜ「濡れたまま」が最悪なのか
雨の日に濡れた工具を放置すると一気にサビるのは、ただ「水があるから」だけではありません。
乾いたり濡れたりを繰り返すと、金属表面に酸素が供給されやすくなり、濃淡ができ、腐食の条件が揃いやすいとされます。(酸素濃度差が腐食を進める要因になる)
小さな観察
まったく同じクリップを「水に完全につけっぱなし」と「濡らしては乾かす」を想像すると、後者の方が赤茶が出やすいイメージはありませんか?
現実でも、“乾湿の揺れ”がある場所(屋外・結露・換気が弱い場所)は要注意です。
塩(海風・融雪剤・汗)があると、サビは加速する
海の近くの自転車が早く傷む、汗がついた工具が点サビする——これは塩分が水の電気の通りを良くする(導電性を上げる)ため、腐食の電気化学反応が回りやすくなるからです。
だから、海沿い・冬の道路・キッチン(塩)・スポーツ後の金属(汗)は「洗って乾かす」だけで差が出ます。
ステンレスは「サビない」ではなく「サビにくい」
ステンレスは鉄にクロムなどを加え、表面に非常に薄い保護膜(不動態皮膜)ができやすい合金です。
ただし、以下の条件ではサビが出ることがあります。
- 表面に塩分が長時間残る
- 傷が深い/汚れがこびりつき膜が再生しにくい
- もらいサビ(他の鉄粉が付着して赤く見える)
「ステンレスなのに赤い」は、材質が悪いというより、使い方・環境の要素が大きいケースが多いです。
塗装・メッキは強い。でも“破れた瞬間”が弱点
塗装や樹脂コート、メッキは、鉄を水と酸素から隔離する強い方法です。
しかし、傷が入るとその一点から局所的に反応が起きることがあります。
- 塗装:傷から下に水が回ると、見えないところで進行
- メッキ:種類によっては、傷があると逆に腐食が集中しやすいことも
ここで登場するのが「亜鉛メッキ(トタン)」の考え方です。
亜鉛が“身代わり”になる——犠牲防食(ぎせいぼうしょく)
鉄を守るために、わざと“先に溶けてくれる金属”を付ける方法があります。
それが 犠牲陽極(sacrificial anode)を使う「カソード防食」の一種です。
- 亜鉛・アルミ・マグネシウムなど、鉄より“反応しやすい”金属を接続
- すると、その金属(陽極)が先に消耗し、守りたい鉄側(陰極)が腐食しにくくなる
「亜鉛が減って、鉄が守られる」というのがポイントです。
この仕組みは船体・港の鋼材・給湯器のタンクなど、長期間水や湿気にさらされる設備で広く使われます。
なぜ“電気的につながる”必要がある?
犠牲防食は、金属間で電子のやりとりが起きることで働きます。
そのため、保護したい金属と犠牲陽極は電気的に接続されていないと効果が出ません。
家庭でできる「防錆」最短ルート
まず“水と塩”を断つ(最強)
濡れたら拭く、塩や汗がついたら水拭き→乾拭き。
屋外保管はカバー+通気(密封すると結露が残る)。
油膜・ワックスで“薄いバリア”
工具なら防錆油、刃物なら薄い油膜。
「次に使うとき面倒」にならない範囲で続けるのがコツです。
塗装・タッチアップは“傷の初期”が勝負
サビは広がるほど削る手間が増えます。
小傷は早めにタッチアップ(補修)すると、労力が段違いです。
“異種金属接触”に注意(もらい腐食)
アルミと鉄、銅と鉄など、違う金属が濡れた状態で接触すると腐食が進みやすいことがあります。
屋外の金具やネジは、材質の組み合わせを意識するだけで寿命が延びます。
まとめ
サビは「水+酸素+電気化学反応」で進み、塩分や乾湿の繰り返しで加速します。
ステンレスはサビにくいが万能ではなく、塗装やメッキも傷の管理が重要です。
そして亜鉛などが身代わりになる「犠牲防食」は、インフラや設備を支える賢い仕組み。
今日からは「濡れたら拭く」「塩分は落とす」だけでも、防錆の効果が目に見えて変わります


