
地図アプリ、配達、カーナビ、ランニング記録。GPSは生活の“空気”のように存在しています。
でも考えてみると不思議です。人工衛星を多数運用し、世界中で使える位置情報を提供する仕組みが、なぜ私たちは無料で使えるのでしょうか。
答えは「善意」ではありません。
GPSはもともと軍事目的で整備された国家インフラで、民間利用はその副産物として広がりました。
この記事では、民間開放の経緯、精度のしくみ、そして「万能ではない」実用上の注意点まで、やさしく深掘りします。
GPSは誰のシステムか:出発点は米国防総省
GPS(Global Positioning System)は、米国防総省が運用してきた衛星測位システムとして説明されています。
軍事では、位置・速度・時刻を高精度に把握することが戦略的に重要です。そこから整備が進み、やがて民間にも利用が拡大していきました。
「無料」の理由:国家負担で維持され、世界標準の効果が大きい
GPSが無料で使えるのは、基本的に「利用料を取らない設計」で運用されてきたからです。
これは、世界中での民間利用が拡大すると、経済効果・標準支配・安全保障上の利点が増える、という国家戦略と整合します。
民間利用の開放については、1983年の大韓航空機撃墜事件(KAL007)後に、米国が民間利用を可能にする方針を示した経緯がよく紹介されています。
昔はわざと精度を落としていた:Selective Availability(SA)
ここが「知らなかった!」になりやすいポイントです。
GPSは当初、民間向け信号の精度が意図的に劣化される運用(Selective Availability, SA)がありました。
これが2000年5月、米国政府の方針で停止され、民間でも精度が大きく改善したと公式に説明されています。
「今のGPSが当たり前に高精度」なのは、技術の自然進化だけでなく、政策判断も大きく関与しています。
GPSの精度の核心:測っているのは“位置”ではなく“時間差”
GPSは、衛星から届く信号の到達時間を使って距離を推定し、複数衛星の距離情報を組み合わせて位置を決める方式です。
イメージとしては、暗闇で複数の灯台の光を見つけ、到達時間(距離)から自分の場所を逆算するようなものです。
ここで効くのが「正確な時刻」。
衛星側の時計がズレれば距離計算が崩れるため、時刻の精度が極めて重要になります。
他国も作っている:GNSSの時代(GPSだけが全てではない)
現在はGPS以外にも、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国のBeiDouなど、複数の衛星測位システムが運用されています(総称としてGNSS)。
スマホは状況に応じて複数のシステムを組み合わせ、精度や安定性を高めることがあります。
ここを知ると「GPSが不安定な場所でも急に改善する」現象が理解しやすくなります。
実用ポイント:GPSは万能ではない(誤差が増える場面)
屋内や地下
衛星信号が弱くなり、位置が飛びやすい。
高層ビル街
反射(マルチパス)で到達時間が狂いやすい。
山間部や谷
衛星が見える空が狭くなり、組み合わせが悪いと誤差が増える。
天候より「見通し」が重要
雨や雲そのものより、建物・地形・屋根などの遮蔽物が影響しやすい。
このため、ナビで迷ったときは「いまどこにいるか」よりも「空が開けた場所に移動して再取得」が効くことがあります。(万能ではありませんが、現場で役立つコツです)
まとめ
GPSが無料で使えるのは、軍事目的で整備された国家インフラが民間にも開放され、世界規模の標準として利用されること自体に大きな価値があるからです。
さらに、かつて民間精度を意図的に落としていたSAが2000年に停止されたことで、私たちの体感精度は大きく向上しました。
GPSは「時間差」で位置を求める技術で、遮蔽物には弱い。仕組みを知ると、便利さと限界をセットで使いこなせます。


