宝塚の至宝、礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第31回。
前回に引き続き『ロミオとジュリエット』から役替わり公演、ベンヴォーリオ編です。
2番手のさゆみちゃん(紅ゆずる)との役替わりは、発表された当時、驚きしかありませんでした。
しかも、ロミオの親友ベンヴォーリオ。
抜擢は喜ぶべきことなのかも知れませんが、当時のこっちゃん(礼真琴)は「めぐり会い … 」のルーチェくんのように、まだまだ弟キャラ全開期。
新人公演はこの公演で初主演、別箱主演はまだ未経験。
本公演でも、前作で急に通し役の当て書きで目立つ役をもらい、爆上げされ始めたばかりでした。
今回は、そんな研5になりたてのこっちゃんが、上級生たちの中で精いっぱい演じた「ベンヴォーリオ」ヴァージョンを振り返ってみたいと思います。
東京公演の千秋楽映像なので、公演を重ねてぐっと良くなっている頃かと。
『ロミオとジュリエット』予備知識
あらすじ
こちらをご覧ください
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主な配役
ロミオ:柚希礼音(新人公演:礼真琴)
ジュリエット:夢咲ねね
ティボルト:紅ゆずる / 真風涼帆
キャピュレット卿:一樹千尋
ロレンス神父:英真なおき
モンタギュー卿:美稀千種
乳母:美城れん
ヴェローナ大公:十輝いりす
モンタギュー夫人:花愛瑞穂
キャピュレット夫人:音花ゆり
愛:鶴美舞夕 / 礼真琴
マーキューシオ:壱城あずさ / 天寿光希
パリス:壱城あずさ / 天寿光希
ピーター:真月咲
死:真風涼帆 / 麻央侑希
ジョン:輝咲玲央
ベンヴォーリオ:紅ゆずる / 礼真琴
礼真琴『ベンヴォーリオ』の巻
第1幕
第1場 ヴェローナの広場
ビジュアルは悪くないですね。
さゆみちゃん(紅ゆずる)がオリジナリティを感じさせた一方で、こっちゃんのビジュアルは初演のとよこちゃん(涼紫央)を彷彿とさせる感じはありましたが、ま、似合っているのでOK。
幕開きのダンスでは、ちょっと力入りすぎ?
ひとりだけ異次元の人みたいなダンスになってましたね。(笑)
いや、カッコイイんですけど、隣の人たちとの空気感の差が…。
このヴェローナの広場では、さゆみティボルトが怖すぎますわ~。
ベンヴォーリオ(礼真琴)をどつくわ、ツバははきかけるわ、睨みつけるわ、も~散々。
なんか学年差とかの、こっちゃんのリアルな立ち位置が頭に浮かんてきちゃうから、ティボルトの怖さ増し増し。(苦笑)
なんか、ついこの前まで端役しかもらってなくて、こっちゃんの登場シーンを必死で探していたのに、上級生の中で対等に芝居をしているこの状況に、すご~く不思議な気分になりました。
でも、さすがのこっちゃん、歌にダンスに、大役を与えられても安定感は抜群。
第2場 ヴェローナ市街
両家の母親たちが歌う♪「憎しみ」の場面。
マーキューシオ(壱城あずさ)とじゃれ合うこっちゃんベンヴォーリオ。
やっぱりこっちゃんがとっても幼く見えるのですが、物語の中の実年齢から言ったらこの子どもっぽい感じが正解なんですよね、実は。
ただ、じゃれ合って笑っている姿が「礼真琴」に見えるのは、未熟さゆえでしょうか。
二人がふざけているときに、階段の上からモンタギュー夫人(花愛瑞穂)が二人にいきなり手をかざして「♪~憎しみ!!!」と歌う場面のこっちゃん、可愛すぎるでしょ。
キョトンとした顔に、「なに、このおばちゃん、こわいんですけど…」って書いてある。(笑)
第3場 キャピュレット家の内外
ちえちゃんロミオ(柚希礼音)との学年差、この段階では、思いのほか感じずに見られます。
が、そもそも、ロミオが大人すぎるんですよね。(笑)
第6場 ヴェローナ市街
ロミオを追いかけて、ゼーゼー言いながら登場するベンヴォーリオくん。
床に寝そべってから起き上がる時の「わ~お」がカワイイ。
そして踊り出すと「Welcome to the world of REI MAKOTO!」(笑)
最初の方のソロで歌う場面、「♪~年寄りが寝てる間に俺たちはおどりだす~」の最後「す~うぅうぅうぅ~」が好き。
わかります?
小刻みな音程の変化を完璧に取ってるのが気持ち良いんですよね~。
そして踊ったあとでも、踊ってる時でも、驚異の肺活量で声量そのままに安定した音程で歌うこっちゃん、やっぱりすごいな。
ちえちゃんやこっちゃんが安定したダンスと歌をこなす中で、しーらん(壱城あずさ)マーキューシオが悪目立ちしてしまっていて、お気の毒。
第7場 舞踏会
ほとんどマスク付けたままなので、あまりこっちゃんの表情を見ることはできませんが、舞踏会を楽しんでいる様子だけは伝わってきます。
マスクを着けたままでバリバリ踊る姿がカッコイイ♡
それにしても、純白の衣装はやっぱり膨張色!?
こっちゃんのスタイルやお顔立ちには、まだフィットしてませんね~。
ちょいちょいマスクをはずして素顔を見せる瞬間がありますが、トータルバランス的になんかちょっと違和感があります、わたしには。
第10場 ヴェローナ街頭
乳母(美城れん)がロミオを探しに来る場面。
マーキューシオとベンヴォーリオを中心にモンタギューの若者たちが弾けてますが、マーキューシオもベンヴォーリオも「いるよね~こういうやんちゃ坊主たち!!」って感じで、とっても自然体。
いたずらしてこぼれる笑顔を見てるとこっちも笑顔になっちゃう。
しーらんとこっちゃんの相性も良いのかな。
違和感なく悪ガキ仲間に見えます。
そして、そこへロミオが登場するわけですが … やっぱり「お兄さん」登場だわ。(笑)
急に空気感が変わった。
第2幕
第2場 ヴェローナ市街
ジュリエットと結婚したロミオを裏切り者だと責めるナンバーで、結構長い場面ですが、こっちゃんのベンヴォーリオに馴染んできたことに比例して、ちえちゃんロミオへの違和感が増してきたのは何故でしょう…。
ロミオがひとりだけ大人びて見えてきてしまいました。
リアルタイムで観ていた時には思いもしなかった現象です。(苦笑)
面白いもんですね。
ってか、見る側が勝手なのかな?(笑)
当時、ちえちゃんロミオを基準に観ていたときは、こういう絡みの場面はこっちゃんの子どもっぽさに「ちょっと違うんだよね~」なんて感じたものですが、こっちゃんベンヴォーリオを基準に観ていると、そもそもの年齢設定からしてこっちが正解な気がしてきました。
もちろん作品を作り上げる意味においては、両サイドがバランスよく交わり合って、どちら側からも違和感を感じさせないのが最終的な正解だとは思いますが … 。
第4場 ヴェローナ市街
マーキューシオの死、そしてティボルトの死。
場面にすっかり見入ってしまい、こっちゃんを振り返るという任務を忘れました。(笑)
でも、それだけこっちゃんベンヴォーリオが場面に馴染んで好演していたということ、だと思います。
いや、間違いない。
第10場 ヴェローナ市街あちこち
この場面から次のマントヴァへの道が、ベンヴォーリオ最大の見せ場です。
群衆の真ん中に役としてひとり立つと、やはりまだ、経験不足で説得力に欠ける空気感が漂いますね。
それは仕方ないとして。
それでも「研5」という学年を忘れてしまうくらい、ベンヴォーリオの世界に引き込まれる瞬間が何度もありました。
当時のこっちゃん、どれほどの努力をしたのかと … 感動しますね。
第11場 マントヴァへの道
ここは歌唱力はもとより、いかに「歌で想いを伝える」か、の場面ですね。
結論から言うと、ものすごく出来の良い新人公演。
歌唱力はもう言うことなく素晴らしく、安心して聞いていられましたが、感情を乗せるはまだまだお勉強といった感じ。
って、素人に言われたかないよ!な感じかも知れませんが。(笑)
でも舞台は受け取る側がどう感じるかって、とても大切な評価基準だと思うんですよね。
いろいろな感じ方があるし、人ぞれぞれ好みも違うので、それが一概にその人の実力への評価ではないですけど。
歌で伝える難しさ …
これって、歌唱力がある人ほど下級生時代につまずく率高い気がします。
本人はものすごく情感込めて、気持ちを込めて歌っているのに、「歌を聴かせているだけだ」とか言われちゃったりして。
こっちゃんも「上手いけど、何を歌っても礼真琴」と言われた時代がありました。
でも、ここの歌の後、ロミオに会ってジュリエットの死を伝える場面のお芝居は素晴らしかったです!
ちゃんとそこにはロミオの親友、ベンヴォーリオが存在していました。
この作品のなかで一番、私が、こっちゃんに「ベンヴォーリオが降臨した瞬間」だと感じたのがこのシーンです。
ロミオの肩に手を置いて「ジュリエットは亡くなったよ… 」と。
信じようとしないロミオの両肩をぎゅっと握りしめ、「嘘じゃない、毒を飲んで、自ら命を絶ったんだ …」と。
このときのこっちゃんベンヴォーリオにグッときます。
第12場 ヴェローナ~キャピュレット家霊廟
ロミオとジュリエットの亡き骸の脇で悲しみに暮れるベンヴォーリオ。
マントヴァのロミオとのシーンが印象に残っていた分、このときのベンヴォーリオの姿がより切なく映りました。
ロミオの顔を覗き込む姿もジーンときますね … 。
そして最後のコーラス、こっちゃんベンヴォーリオがセンターで歌い上げるもんだから、いつもにも増して、余計に泣けてきた~。
第16場 フィナーレD(フィナーレの男)
もぉここはね、黙って見惚れましょう。(笑)
東京の千秋楽ともなれば、踊り込まれて、カンペキなカッコ良さでございます。
ちょいちょい近くに「死」の化粧で踊る、おどろおどろしいゆりかちゃん(真風涼帆)が目に入ってきてビビりますが、こっちゃん、ガンガン踊っていてサイコー!!♡
第18場 フィナーレF パレード(フィナーレの男)
パレードの歌手、前回は3人娘♡でしたが、今回はもちろんベンヴォーリオとして両手に花です。
これはこれで落ち着きますが、3人娘も捨てがたい。(笑)
ちえちゃんを迎える際に、普通にこっちゃんが視界に入る場所でシャンシャン掲げてるってのがまだ見慣れないので不思議な気分。
あ、いや、リアルにはもちろん腐るほど見てますけど、こっちゃんの振り返りの中では、ね。
そしてお楽しみの銀橋。
映らな~い!(笑)
それアリですか!?ですよね。
ずっとセンター映してて、両サイドの人たちまったく映してくれず、最後に本舞台でチラリと映って終了 …。
それはそうと、この日のパレードのちえちゃんの髪、乱れ放題。www
大階段に登場したときから「おやっ?」って思いましたが、特に左のサイドがボサボサ。
意図してこうしたには …、もう少し整えても、、、。
まとめ
再演当時は、100% 柚希礼音を軸にして見ていたので、若いこっちゃんのベンヴォーリオに対して違和感を感じたりもしましたが、いま改めて見てみると、ちえちゃんロミオが大人すぎという現実を知ることになったという。(笑)
いや、当時から「今さらロミオじゃないでしょ」って声は確かにありましたし、確かにそうよね、と思ったこともありました。
でもファンは盲目ですから。www
ポジティブな言い方をすれば、柚希礼音という人の存在感が半端なかったってことです。
その場に出てくると、その存在感が大きすぎて周りとのバランスが難しい。
そんなちえちゃんにも「この子、大丈夫かい??」な時代がありましたが … 。
さて次回は、いや次回も、『ロミオとジュリエット』です。
正直、ロミジュリはもうお腹いっぱいなんですが … 記念すべき新人公演初主演を振り返らないわけにもいかないということで…
こっちゃんが初主演、ロミオを演じた新人公演『ロミオとジュリエット』を振り返ります。
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