宝塚の至宝、礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第69回。
こっちゃんの全国ツアー初主演作品『アルジェの男』を振り返ります。
いよいよ、礼真琴、トップスターへの助走が始まります!
2番手時代の煌めきは皆さん、ホント眩しいですよね~。
ま、まれにびっくりするくらい煌めいてくれない2番手スターさんもいるにはいますが … こっちゃんビームは眩しい☆彡
さて、今回振り返る「アルジェの男」。
こっちゃんの持ち味とは少し異なる役柄でしたが、これがまたカッコよかったですね~。
正直、この公演が決まった当初は「観る前にあまり期待を高く持ちすぎないように」と構えていましたが (笑)、見事にそれを裏切ってくれたこっちゃんでした。
何これ、めちゃめちゃかっこいいじゃないかっ!と。(笑)
歌やダンスは言わずもがなですが、芝居心って大事なんだな~(← 当たり前)としみじみ感じた公演でした。
『アルジェの男』予備知識
あらすじ
舞台は第二次世界大戦前、フランス占領下にあったアルジェリアとパリ。
孤児として育ちながら、 大いなる野望を抱いて成功への道を駆け上がろうとする青年ジュリアン・クレールの生き様をドラマティックに描いた物語。
パリ祭の夜、ひょんなことからフランス総督に人生を委ねることとなったスラム街出身の孤児ジュリアン。
彼の夢見た野心は、ついに数年越しで叶えられようとしていたのだが …。
主な配役
ジュリアン・クレール:礼真琴
サビーヌ:音波みのり
ジャック:愛月ひかる
マリア・シャルドンヌ:万里 美
ルイーズ・ボランジュ:白妙なつ
ミシリュー内相:大輝真琴
マダム・マルト:夢妃杏瑠
マルセル:漣レイラ
イヴ:音咲いつき
ミッシェル:紫藤りゅう
ボランジュ総督:朝水りょう
ルネ:彩葉玲央
エルザ:澪乃桜季
ルイ:天希ほまれ
シュザンヌ:華雪りら
アナ・ベル:小桜ほのか
クリスチャン:遥斗勇帆
レナ:桜里まお
ジャン:隼玲央
エリザベート:桜庭舞
マチルド:二條華
アルマン:希沙薫
アンドレ:極美慎
シャルル:煌えりせ
フェリックス:碧海さりお
セルジュ:颯香凜
クロード:夕陽真輝
カトリーヌ:彩園ひな
ピエール:天飛華音
ポール:奏碧 ケル
ヴィヴィアン:水乃ゆり
モーリス / フィリップ:鳳真斗愛
リリー:澄華あまね
花売り娘:瑠璃花夏
アルジェの男
ここまでくると礼真琴を振り返るというより、公演全体を振り返る感じですね。
下級生時代から何かとご縁のある上級生はるこちゃん(音波みのり)を相手役に迎えたこの公演でしたが、学年の違和感が一切ないお似合いの二人♡
近年の男役としては小柄なこっちゃんには、小柄のはるこちゃんがビジュアル的にもバランスがよかったのというのもありますね。
オープニング
茜色から紺色に染まっていく星空をバックに荒くれたメンズたちがストリートで踊り出す幕開きは、どこかウエストサイドストーリーを思い起こさせます。
赤い革ジャンにサングラス姿で登場するこっちゃん、この段階では正直、ちょいと説得力に欠けるビジュアル。
主役登場のオーラが薄かったですね。
でも、サングラスを外した目元のインパクト、声を発した時の低音ハスキーボイスで、一気に惹き込まれていきます。
そして、のちに2番手としてこっちゃんを支えてくれたあいちゃん(愛月ひかる)登場。
こちらはさすがの貫禄です。(笑)
二人が並ぶと、やはりあいちゃんの存在感に圧倒されますね。
でもこっちゃんが歌い出したらもう一方的にこっちゃんの世界へ引きずり込まれ…
この手で~♪この手で~♪つ~か~も~♪
この耳馴染みのあるフレーズを、完璧な音程と声量と魅力的なあのヴォイスで歌われたら、堕ちるっしょ、そりゃ。
あの~スリさん、何か召し上がって…
ジャック(愛月ひかる)に焚き付けられて、ボランジュ総督(朝水りょう)からスリをはたらくこっちゃんジュリアン。
財布をスろうとして見つかり、総督に追い詰められるジュリアン。
ひらきなおってその場にあぐらをかき「どこにでも突き出しやがれ」と悪態つくジュリアンに、総督の奥様が放つひとこと。
「あの~、スリさん。宅はこの家ですの。」
はっ?ど~いう展開?
「とにかくお入りになって、何か召し上がっていらっしゃいませんこと?」
美しいなっちゃん(白妙なつ)の声でこれ言われると、腰砕け。(笑)
ジュリアン、思わず鼻で笑います。
そりゃそ~だわな。
「俺をど~しようってんだ!」
そして総督がひとこと。
「ついてきなさい!」
しばし座り込んだままこの状況に考えを巡らすこっちゃんジュリアン。
しびれを切らした総督が激ギレして、手に持っていた杖と足を地面に叩きつけ、、、
「ついて来いって言うんだっっっ!!!」
心を決めて立ち上がり歩き出すジュリアンに、なっちゃん総督婦人が声をかけます。
「ごめんなさいね、びっくりなさったでしょう?ウフフフ、あれで悪気はありませんのよ。」
総督、素晴らしい妻をお持ちです。(笑)
しかも、歩き出したこっちゃんジュリアンに …
「あ~、忘れものですわ」
と言って、地面に落ちていた(ジュリアンが総督に突き出して叩き落とされた)ナイフを拾ってこっちゃんジュリアンに返す親切ぶり。(笑)
天然なのか、この時代の無知な貴婦人なのか、、、柴田先生らしいですよね。
こうしてジュリアンの人生が動き始めるわけですが、このやり取りをしている間に、ジュリアンは十分逃げる余裕があるのに逃げなかった。
屋敷に招き入れられたあとで、総督にもそれを指摘されています。
「だよね、やっぱりみんなそ~思うよね」と、ひとりで心の中で総督と会話してしまいました。(笑)
ここで逃げていたらまた違う人生があっただろうし、でも逃げずにその場の流れに身を任せたことで、それがいろいろな意味で彼の人生を動かして行くことになるわけで。
人の行動すべてに意味があるんだな~って思わせてくれますね。
運転手からはじめ、段階を踏んでちゃんと登っていくんだ、成功や栄光に近道などない。
昭和の作品はときとして 時代遅れな違和感 を漂わせることもありますが、柴田先生のこういった メッセージ性 は秀逸です。
秘書官たち
総督についてパリに出たこっちゃんジュリアン、正装もお似合い。
紫藤りゅう君たち演じる、秘書官仲間にパリの街へ誘われる場面がありますが、純粋に出世街道を歩いてきたであろう秘書官たちと、野心に燃えて闇街道から成りあがってきたジュリアンが一緒にその中にいることへの違和感。
化粧の雰囲気もありますが、こっちゃんジュリアンの「異を放つ雰囲気」が素晴らしい。
明るく楽しく彼らと絡んでいても、どこか違和感を感じさせるジュリアンの孤独が魅力的。
陰のある男はモテますな。(笑)
はるこちゃんサビーヌは適役
前半の、不良グループにいながらもどこか純真さを漂わせているはるこちゃんサビーヌ。
こっちゃんジュリアンへの切ない恋心を押し殺して、彼の夢を後押しする健気さが似合いますね。
ゆえに、後半、パリで露出度高めのお衣装に身を包み踊る姿にいい意味で違和感を感じ、さらに切ないです。。。
パリで出世したこっちゃんジュリアンに「踊り子」として再会するというあるある。
そしてさらに、昔いがみ合っていた悪仲間あいちゃんジャックの女になって生き長らえてきた、という定番ストーリーですが、はるこちゃんはそれを純粋に演じ切っていますね。
こっちゃんジュリアンが踊り子となった彼女を見つめる複雑な瞳、表情、しぐさに、深い思いを感じます。
出世と引き換えに大切なもの、大切な人を失ったかもしれない後悔の念。
人のココロって複雑。
それにしても、あいちゃんジャック、嫌な奴。
普段のあいちゃんからこのジャックというキャラクターがかけ離れているのはわかっていても、悪役の宿命、愛月ひかるにすんごいムカついてくるわ。(笑)
そして 柴田先生のやさしさの塊、打ちひしがれたこっちゃんジュリアンに手を差し伸べる秘書官仲間ミッシェル(紫藤りゅう)の存在。
しどりゅー、ありがとう!(笑)
歌と芝居心のハーモニーは最強
総督の娘エリザベート(桜庭舞)にみんなの前で邪険に扱われ、プライドを切り裂かれたジュリアンが、「いつか膝まづかせてやる!」と怒りと野心を込めて歌う主題歌にはゾクゾクッとするほどの情念を感じます。
鳥肌が立ちます。
ただ上手いだけの歌ではなく、そこに芝居心が重なったハーモニーは本当にしびれますね。
何を歌っても「礼真琴」と言われた時代を経て、こうした芝居心のこもった歌を聴かせてくれるようになったこっちゃん。
「天才」とは1%の「才能」を、99%の「努力」で自分のものにできる力を持っている人、なんだろうな。
こっちゃん、サイコー!
女ったらしのジュリアン
目の見えないお嬢様、アナ・ベル(小桜ほのか)の伯母から将来を約束すると持ち掛けられ、アナ・ベルをものにしてしまうジュリアン。
ほのかちゃん、こっちゃんジュリアンの甘い(悪魔の)ささやきに動揺する姿がとってもリアルで上手いですね~。
そしてこっちゃんの迫り方がエロい。(笑)
でもヤバいくらいにこっちゃんの迫り方が素敵すぎて、そりゃ顔見えなくても堕ちるわ。
顔が見えてたら、なおのこと 秒殺。www
きわみくんがアナ・ベルのお世話をする純粋な青年を演じていますが、お顔がきれい。
きれ~な二枚目。
でも、こっちゃんジュリアンの色気だだ洩れの魅力には到底及ばず、残念!(笑)
でもって、ジュリアンとアナ・ベルの関係を知った、まめちゃんエリザベートのワガママお嬢様っぷり炸裂。
自分からジュリアンを突き放して彼のプライドを傷つけたくせに、急に嫉妬に狂って
「あなたは私を傷つけた」「私の誇りはどうなるの?」
とか平気で歌っちゃうという … 理不尽なお嬢様。(笑)
こっちゃんジュリアンが女心を野心の道具にしちゃってるのもたいがいですが、このエリザベートの勝手っぷりにもオイオイ、そりゃないよ~と突っ込みせずにはいられません。
総督パパと天然ママから「ジュリアンに惹かれている証拠だよ」と諭され、あっさりジュリアンに告白するところはまだ可愛げ気ありますけどね。
ジュリアン、してやったり。
そしてそこにアナ・ベルが居合わせてしまうという、すごい偶然。
アナ・ベルの傷ついた心の描写がちょっと独特。
これ、ほのかちゃんアナ・ベルにアンドレ(極美慎)が色々頼まれてますが、結果的に、状況次第では自●ほう助の罪に問われるレベル …。
アナ・ベルの台詞を聞きながら、そっちのほうが心配になっちゃいました。
彼女の心の傷の深さはものすごく伝わるのですが … なんとも。
とはいえ、このきわみくんアンドレも、ただでは終わらない真っすぐすぎる美青年。
ラストには … ね。
人生ってやつは …
あいちゃんジャック、ダメダメな男やね。
こっちゃんジュリアンも決してまっとうに生きているとは言えませんが、、、そこはファン心理というもので。(笑)
はるこちゃんサビーヌがジャックを銃殺した後からのジュリアンのくだりはある意味とってもきれいごとだけど、でも、こっちゃんジュリアンの「愛」が溢れてくる感じが好きです。
サビーヌへの愛に気づき、その場で栄光を捨てる決心をするジュリアン。
まずはアルジェへ行って、そして砂漠へ行こう!っていう提案には若干、「ん?なんで砂漠?」って思いましたけど。(笑)
でも、ちゃんとサビーヌを幸せにしてあげてね!って気持ちになります。
はるこちゃんサビーヌ、ほんと~に健気。
で、手を取り合って二人の人生を歩みだそうとした瞬間に立ちはざかったのは、、、そうあの美青年。
きわみくんアンドレの放った銃弾に倒れるこっちゃんジュリアン。
結局、人生はそういうことなんだな。
この先、サビーヌはどうやって生きていったのでしょうか…。
ジュリアン、もう少し早くサビーヌの愛に向き合ってほしかったなぁ。
まとめ
なんだろう、この作品って駄作という人も多いですけど、私的にはそこまでの駄作とは思わないかな~。
確かに昭和テイストの価値観というか単純さというか、いろいろな「?」もありますが、人間の本質をものすご~く分かりやすく表現してるんじゃないかと。
ま、そのわかりやす過ぎるところが駄作と言われる所以でもあるかもしれませんが。
とにもかくにも、こっちゃんジュリアンとはるこちゃんサビーヌの相性は抜群でしたね♡
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