宝塚の至宝、礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第38回。
今回は、新人公演『The Lost Glory-美しき幻影-』を振り返ってみようと思います。
こっちゃん(礼真琴)はトップスターちえちゃん(柚希礼音)の役を演じていますが、この作品は専科からいしちゃん(轟悠)が特別出演で主演していたので、新人公演の主演もこっちゃんではなく、まおくん(麻央侑希)が務めました。
本公演ではちえちゃん率いる星組のそれまでの空気感とは少し異なり、いしちゃんが参加したことで全体的に大人の香り漂う作品に仕上がっていましたが …
主演のまおくんはもともと実力的にちょっと … な感じだったし、「おいしい悪役」を演じるこっちゃんは悪役のイメージとは程遠い、まぁ~るいカワイイ童顔。
さらにヒロインを演じるあーちゃん(綺咲愛里)も超・童顔。
さてはて、新人公演のできばえやいかに。
新人公演『The Lost Glory -美しき幻影-』予備知識
あらすじは本編をご参照ください。
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新人公演 主な配役(本役)
オットー・ゴールドスタイン:麻央侑希(轟悠)
イヴァーノ・リッチ:礼真琴(柚希礼音)
ディアナ・キャンベル:綺咲愛里(夢咲ねね)
サム:ひろ香祐(美城れん)
バーバラ・キャンベル:毬愛まゆ(万里柚美)
ベン:飛河蘭(美稀千種)
ディアナの伯母:華鳥礼良(毬乃ゆい)
ウォルター・ライマン:漣レイラ(十輝いりす)
エマ:妃海風(音花ゆり)
ウィル・スミス:桃堂純(鶴美舞夕)
ロナルド・マーティン:瀬央ゆりあ(紅ゆずる)
ムッシュ・ヴァラン:凰羽みらい(壱城あずさ)
ドン:音咲いつき(如月蓮)
ディアナの伯母:澪乃桜季(白妙なつ)
ハリー・エヴァンズ:朝水りょう(海隼人)
スタンリー:拓斗れい(汐月しゅう)
レイモンド・ウォーカー:天華えま(天寿光希)
フランシス・デュモント:天乃きよら(音波みのり)
運の良い主婦:白鳥ゆりや(優香りこ)
ディアナの従兄:蒼舞咲歩(大輝真琴)
ヴォーグ誌の女記者:真衣ひなの(愛水せれ奈)
ヴォーグ誌の女記者:逢月あかり(妃白ゆあ)
カーティス・ダンフォード:紫藤りゅう(真風涼帆)
リチャード・キャンベル:凰津りさ(輝咲玲央)
スティーブ:夕渚りょう(瀬稀ゆりと)
トーマス:遥斗勇帆(夏樹れい)
ヘンリー:湊璃飛(十碧れいや)
マイケル:彩葉玲央(麻央侑希)
パット・ボローニャ:綾凰華(礼真琴)
エヴァ:五條まりな(妃海風)
エリオット:天希ほまれ(瀬央ゆりあ)
ジョー:天路そら(音咲いつき)
ミラベル:城妃美伶(綺咲愛里)
ビル:紫りら(紫藤りゅう)
7歳のオットー:美都くらら(城妃美伶)
もう一人のイヴァーノ・リッチ
幕開き、こっちゃん演じるイヴァーノ・リッチのひとり台詞から始まりますが、やはりスポットが当たった瞬間は「ん?なんか違う」と思ってします。
やっぱり童顔、でも芝居でねじ伏せる
童顔に精いっぱいの「ワル」感を浮かべていますが、背伸びしているといった感じ。
ただ、それは幕開きのわずかな間だけ。
面白いことに数十秒後には、この童顔のワル感が自然に思えてきてしまう。(笑)
こっちゃんの魅力のひとつでもある低音ハスキーボイスと、ダークにまとめたメイクが生きていますね。
手先のしぐさや動きには「男役」としての未熟さや、子どもっぽさが見えますが、とはいえ幕開きから「なんとなく」でもイヴァーノに惹き込むこっちゃん、さすが。
イヴァーノのキャラクターにこっちゃんの童顔が似合っていないのは事実なのですが、こっちゃんはちゃんと芝居で惹き込んでいきます。
なおちゃん、初々しくてカッコイイ♡
ヒロイン、ディアナ・キャンベルの元恋人で、こっちゃんイヴァーノに嵌められ堕ちていく青年ロナルド・マーティンを演じるなおちゃん(瀬央ゆりあ)が 超・好み!(笑)
初々しくて、そしてハンサム♡
ただ、下級生時代に新人公演で大きな役をもらうとよくあることではありますが、本役のさゆみちゃん(紅ゆずる)の影が …。
とはいえ、なおちゃんの「表情」のお芝居は素晴らしいです。
そしてクライマックス、だまされたと知って「絶対許さない!」と銀橋で決意するロナルドなおちゃん、迫力満点。
イヴァーノに何度も発砲するときのロナルド、下を向いたまま引きがねを引くロナルド。
この場面にロナルドの「らしさ」を感じます。
撃たれて悶えながら倒れるこっちゃんイヴァーノ、死の間際のイヴァーノの芝居にもジーンときます。
こっちゃんも、なおちゃんも二人とも芝居心ありますね。
ブラックスーツに「着られている」
この作品では、全編通してずっとイヴァーノはブラック・スーツを着ています。
本役ちえちゃんのブラック・スーツ姿は、背も高く体格的にも似あっているし、キャリア的にも着こなしが板について男の色気を放出していましたが、こっちゃんイヴァーノは、まだまだ「着られて」いる感じ。
でも、こっちゃんは … 芝居心でねじ伏せます。(笑)
場面によっては本公演かと勘違いする瞬間があるほどに。。。
それはそうと、シャツの前ボタンをはずして胸元はだけさせてるこっちゃんイヴァーノ、なんだかエロい。(笑)
男の色気とは遠くかけ離れていて、ちょっと違和感。
男役として未熟な証拠ですね。
主役はやっぱり礼真琴!?
本公演ではいしちゃんがオットー・ゴールドスタインを貫禄たっぷりに演じていましたが、まおくんが演じるオットーはかなり印象が薄いですね。
作品の作りがイヴァーノ軸で描かれているのもありますが、それでも「主演」はオットー。
こんなに印象が薄いようでは、、、。
歌はまおくん比でかなり頑張っているほうかなとは思いましたが、全般的に輝きが見られませんでした。
つまり、こっちゃんの独壇場。
こっちゃんイヴァーノが芝居をガンガン引っ張っていた印象で、まるでイヴァーノの物語。(苦笑)
二人が対峙すると、こっちゃんの圧倒的な貫禄勝ちです。
まおくん、お芝居も頑張ってはいるけど、なんでだろう?
伝わってくるものがないというか、、、セリフを言っているだけで訴えかけてくるものがないというか、、、
もったいなかったですね、まおくん。
もったいないと言えば …
こっちゃんが本公演で演じていた靴磨きの少年パットを演じた綾凰華。
今さらながら組替え後、早々に退団してしまったのが ほんとーにもったいない。
見栄えも良く、そこそこ平均点以上をこなせて。
このまま星組で育っていたら、今頃こっちゃんを支える存在になってくれていたのでしょうか。
そしてもうひとり、城妃美伶ちゃん。
こっちゃんのバウ初主演作『かもめ』で相手役ニーナを演じたのが彼女でしたね。
この新人公演では田舎から出てきたミラベルという女の子を演じていましたが、本役のあーちゃんより明らかに適役。
お芝居もうまく、安心して見ていられます。
綾凰華、城妃美伶、ふたりとも組替え、そして惜しまれながらの退団。
これがスター制度の難しいいところ。
もちろん大人の事情もあるのでしょうが、すべてはタイミング。
95期のスター集団の前後に入団した生徒さんにしても、もし何年か前、何年か後に入団していれば … という思いで散っていった生徒さんも沢山いることでしょう。
星組では「礼真琴」という逸材を前に、今回の主演だったまおくんや、そのほかにも散っていった候補生たちがいたであろうことも事実。
エンターテイメントもビジネスなので、こればかりは仕方のないことではありますが、実力のある有望な生徒さんたちが、夢半ばで退団を選択されるのは本当にもったいないですね。
今回、懐かし新人公演を観ていて改めて、そう強く思いました。
まとめ
ものすごく久しぶりにこの新人公演を観ましたが、やはりこっちゃんの独壇場。
お顔こそまだ童顔が際立っていますが、芝居や歌はもうこの頃には出来上がりつつありましたね。
この後、どんどん男役としての色気を身につけて素敵なスターさんに成長したこっちゃん。
この時代に「礼真琴」というスターさんがいてくれて本当に良かった!
こっちゃん、タカラジェンヌになってくれてありがとう!♡
そしてちえちゃん、こっちゃんを宝塚に導いてくれてありがとう!!♡ (笑)
次回は、こっちゃんの全ツ初「ヒロイン」作品、紅ゆずる主演の全国ツアー公演『風と共に去りぬ』を振り返ります。
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