この記事は2022年12月14日に掲載した記事の再掲載です
星組のみなさま、大劇場公演の完走!千秋楽おめでとうございます。
あたり前に公演の幕が開き、あたり前にスケジュール通りの公演を重ね、あたり前に千秋楽の日を迎えることの難しさ。
舞台に立つ生徒さんたちはもちろんのこと、公演に携わるスタッフの皆さん、そしてファン、関わるすべての人々にとって、緊張の日々を乗り越え無事に迎えた千秋楽は、感動もひとしおですね!
私は残念ながら生の舞台は観劇できませんでしたが、ホームシアター(ちょっとカッコ良く言ってみた … 笑) で千秋楽を観劇しました。
この公演が発表されてから早数カ月。
初日映像でおいしそうな(いや絶対においしい)餌を撒かれ、目の前に人参ぶら下げられた状態で「お預け」食らっていましたが(笑)、ようやく全編を観ることができ、感動冷めやらぬうちに感想を書いておきたいと思います。
ディミトリ~曙光に散る、紫の花~
ずっと思っていたこと。
ポスター、この表紙じゃダメだったのか?
断然こっちのほうがコッコいいし、こっちゃん(礼真琴)の表情もいたって自然。
ポスターのこっちゃん、加工が過ぎて、アンドロイドみたいじゃないですか …?(苦笑)
素晴らしい名作の誕生!
この作品、はじめて原作を読んだ時から絶対に宝塚に向いていると直感しましたし、主人公のディミトリとルスダンが礼真琴&舞空瞳にピッタリ!
こっちゃんとなこちゃんのために書かれた作品なのではないか思うほどで、とにかく感動しながら読み進めました。
読んでいるときから台詞がこっちゃんやなこちゃん(舞空瞳)の声に乗って聞こえてくるくらいだったので、これが実際に舞台に乗ったら … と期待が膨らむばかりで観劇を心待ちにしていました。
もうね、感動。
そのひとことが「感想のすべて」です。
前評判でもかなり高評価する声が多く、星組ファン以外からも「良い作品だった!」という声を沢山聞いていたので、さらに期待度増し増しで観劇したところ、そのさらに上を行く名作で、後半はずっと涙・涙・涙の大洪水。(笑)
どの歌も、どこか懐かしさを感じる美しいメロディー、思いのほか多くの「歌」で彩られていたのも良かったですね。
原作に忠実でありつつ、宝塚らしい流れや演出が加えられ、さらには星組生一人ひとりのお芝居の力で「名作」が出来上がった感じ。
素晴らしかったラストシーン
個人的には、リラの木の前で迎えるラストシーンがとても気に入りました。
すでに天へ召されたディミトリが、最後にまた登場するのは宝塚あるあるで想定の範囲内ですが、ここでルスダンと交わらなかったというのが素晴らしい演出だったな、と。
まだ生あるルスダンが、ディミトリの亡霊と踊らなくて良かった~。(笑)
リラの木の前で、与えられた使命を果たし生き抜く決意を涙ながらに語るルスダン、それを背中越し、穏やかな表情で聞いているディミトリ(の亡霊)。
なんかね、もぉ、感動して涙が止まりませんでした。
「… だから、ぜんぶ終わったら、よく生き抜いたって、抱きしめて … このリラの木の下で!」
なんかね、このセリフにものすごく感動したんです。
命をかけてルスダンへの愛を貫いたディミトリ、そしてその愛の深さの意味を「強さ」で受け止めるルスダン。
いや、ルスダンだってほんとうは「強く」なんかなりたくなかったはず。
でも、愛ゆえに強く生き抜くことを決意するルスダン、想像を絶する人生ですよね。
もちろん、ディミトリとて苦難の人生ではありましたが、この物語の主役はやはり原作のタイトルロールである「ルスダン」であることを、改めて実感しました。
「ぜんぶ終わったら、よく生き抜いたって、抱きしめて」
このルスダンの言葉を聞いたとき、なんだかよくわからない、宝塚の舞台を観ながらこれまで感じたことのない何とも言えない感情が湧いてきて…
うん、「生きる」って「勇気」だな、なんて思います。
勇気とは何か。
うん、ほんとうに考えさせられましたね。
生まれる場所は選べない、でも、生きる道を探し、選び、進んで行ける
深いな、この歌詞。
あ、ついでに、暗転した後、緞帳をおろす前にもう一度、舞台上のリラの木を見せる演出も素晴らしい。
あれだけで、感動の余韻を楽しむことができました。
ディミトリはいつか帰ってくる…
ディミトリのモデルとされた人物は、この時代に実在し、ルスダンと結婚した事実も歴史に残されていますが、この物語のように明確に「天に召された」ことには言及されていません。
ルスダンを救うためにジャラルッディーンを裏切ったことまでは、ほぼ史実に忠実に描かれているようですが、実際にはディミトリのその後の消息は不明であるようです。
この記事は2022年11月19日に掲載した記事の再掲載です 星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』が開幕し、おおむね好評を得ているようで。 昨日、東京公演の友会2次抽選結果が出ましたが、みなさまチケットはGETできましたか? 私[…]
つまり、宝塚版で、アヴァク・ザカリアンの報告によりディミトリが天に召されたことを予感しながらも、心で受け止められないルスダンがザカリアンに問う場面。
ルスダン「ディミトリが戻ったら、今度こそ議会は、王配の出席を認めてくれますか?」
ザカリアン「もちろんです!お戻りになるその日まで、我ら臣下一同、王配殿下に代わって陛下をお支え致します!」
このとき、ふと考えたんですよ。
もしかしたら、ディミトリとされる人物は、この物語のように天に召されたわけではなかったかも知れないよね、と。
歴史上、消息を絶ったというだけで、亡くなったのではなくどこかでルスダンを見守っていたのかも知れないじゃないか、と。
あまりにもすっかりこの物語にハマり込んでしまい、物語を超越して、頭が史実とごっちゃになって、ルスダンの気持ちに寄り添いたくなってしまいました。(笑)
さっきからラストばかりに言及していますが、それだけラストに感動するというのは、この物語が最初から最後まで一貫して心に刺さりまくったということなのです。
クライマックスへ向かうそれまでの物語が素晴らしいです。
ルスダンがジョージアの女王として生き抜いたその先に、温かで穏やかなディミトリのぬくもりが待っていたことを、心から信じたい…。
ディミトリ / 礼真琴
甘いハスキーボイスで奏でる主題歌のなんと美しいことか。
心情をメロディーに乗せるこっちゃんの歌、ぴかいち。
そして戦いの舞いは美しく勇ましい。
ルスダンを見つめる優しい瞳、温かい微笑み、ディミトリの深い愛情が溢れていました。
すみません、ネガティブな感想が何ひとつ出てきません。(笑)
いろいろ語りたいことはあったはずなのに、感動しすぎて何も出てこないわ~。
とにかく、この作品は間違いなくこっちゃんの代表作のひとつになりますね。
ルスダン / 舞空瞳
なこちゃん、見違える成長っぷり。
いつもの癖あるセリフ回しもずいぶん抑えられて、少女時代もイキイキと演じていてカワイイ♡
ディミトリが一貫してルスダンへの深い愛を貫いているのに対し、ルスダンはディミトリへの愛、そして女王としての孤独の間で揺れ動きながら、疑心暗鬼になって不貞にはしってしまう心の動きもうまく演じていましたね。
喜怒哀楽のはっきりしたルスダンを、生き生きと演じていて、可愛いだけじゃなく、キリリとした女王の威厳をここまで演じられれば、十分及第点。
なこちゃんのお芝居にこんなに泣かされる日が来ようとは。
ディミトリが敵国の使者としてルスダンと再会するくだりから、もうずっと最後まで泣かされっぱなしでした。
ジャラルッディーン / 瀬央ゆりあ
開演から45分間、出番なしのジャラルッディーン。
その後も出番はそんなに多くないので、少ない場面でいかに存在感を見せられるかという役柄ですね。
なおちゃん、さすがでした。
登場シーンから貫禄たっぷりのジャラルッディーン。
目ヂカラが半端ない。
でも懐の深さをちゃんと感じさせることができるのは、なおちゃんの個性なんでしょうかね。
正直、役的にはありちゃん(暁千星)演じるザカリアンの方が出番も多いし美味しいです。
それでもやっぱりこのジャラルッディーンはなおちゃんが適役だと思いました。
こっちゃんがナウオンでも言っていましたが、ディミトリがその懐にすっぽり包み込まれる違和感がない。
もう少しこの二人の関係性を丁寧に描いてくれるとよかったのですが、さすがにそこまで描くと時間が足りないので仕方がないですかね。
ルスダンによって閉じ込められたディミトリを救い出しに来たジャラルッディーン、このときのディミトリの心情を「心の声」として天の声が入ったのはちょっと残念。
違和感がありました。
もう少し二人の関りを通じて心情を描く方法はなかったのかな、と。
ディミトリが裏切りを働いたと知る場面は泣けましたねぇ…。
アン・ナサウィーから、ディミトリ―が伝書鳩を飛ばす姿を見たと報告されているときの、まぶたをヒクヒクさせるなおちゃんジャラルッディーンの表情が印象的。
そして、すべてを悟り、やり終えたかの如く穏やかな表情を浮かべるこっちゃんディミトリ―の表情…
ジャラルッディーンの腕の中で息絶えるディミトリ―。
不思議な関係性ゆえに、ディミトリ―が主役の物語ならば、やはりもう少しこの二人の関係性を丁寧に描いてほしかったな。
ただ、この役はやはりなおちゃんならでは、な気がしましたね。
アヴァク・ザカリアン / 暁千星
原作では、この人物がまさかここまで膨らませられるとは思わず。
配役発表になったときから興味津々でしたが、大活躍でしたね。
ディミトリもザカリアンも同じようにギオルギ王を慕っているはずなのに、人の感情はこんあにも異なる立場を取らせてしまうんですね。
ありちゃん、実力のある人なのでそつなくこなしていましたが、つかみどころのない意外と難しい役ですよね。
一歩間違えば、ただ単にひがみ根性丸出しのガキにも見えてしまうし。(笑)
ディミトリの尊い愛のかたちを目の当たりにして、やっと目を覚ますという、、、ね。
でも、この時代、誰もがきっとこうした権力闘争のなかで、嫉妬したり、裏切ったり、欺いたりしながらしか生きられなかったんだろうな~と。
いちおう主役に対峙する悪役ではありますが、完全な「悪」ではないというところも難しいですよね。
ありちゃん、これからの活躍が楽しみです!
ギオルギ / 綺城ひか理
星組生として最後のあかりちゃん(綺城ひか理)。
包容力たっぷりのギオルギ王でしたね。
原作では前半で亡くなってしまうので、出番が少ないのかな?と思っていましたが、意外としっかり出番や見せ場が作られていて、さすがな演出だなと。
こっちゃんより下級生ながら、いつも上級性かと思うような落ち着いた雰囲気漂うあかちゃんなので、ギオルギ王にはピッタリの役どころ。
戦の場面も勇ましく、星組での有終の美!でしたね。
バテシバ / 有沙瞳
安定した実力で、今回も安心して見ていられました。
とにかくみほちゃん(有沙瞳)は素晴らし声の持ち主なので、セリフ回しも歌声も、いつも惚れ惚れします。
ギオルギ王との大人の愛。
この二人の愛のカタチがひとつのキーワードにもなっていて、出番は少ないけど重要な役。
バテシバ瞳×ルスダン瞳 … 迫力ありますね~。
そしてそのあとの、いきなりクライマックスかのようなギオルギ王、バテシバ、ディミトリの三重唱は圧巻でした。
アン・ナサウィー / 天華えま
戦いの場面でも、他人事みたいに涼しい顔をしてジャラルッディーンの傍らに立っているぴーすけナサウィーさん。(笑)
そのひょうひょうとした表情と雰囲気が絶妙でした!
出番は少ないですが、気づくとジャラルッディーンのそばにいるという、ね。
最後、ディミトリの運命を決定付けるのは、このナサウィーの「ディミトリが伝書鳩を飛ばすところを見た」というひとこと。
ディミトリが裏切ったのは確かだけれど、できれば、黙っていて欲しかったな。(苦笑)
ミヘイル / 極美慎
美青年そのもの。
でも、冷静に考えたら、この時代に奴隷が女王を慕うなんてことだけでもびっくりなのに、ましてや「傷ついた心を慰めてあげたい」なんて、あり得ないですよね~。
思い上がった男としか…。
ごめんなさい、どうやってもディミトリの味方にしかなれないわ。(笑)
それはそうと、こっちゃんがナウオンで言っていましたよね。
原作ではいきなり剣を突き刺すけど、今回の舞台版では剣を突き刺す前に「何をしている?」ってちゃんと聞いているので、ちょっと優しいと。
でもさ。
「何をしている!?」って言い終わるか終わらないかのうちに刺してたし。
これじゃ、いきなり刺すとかわらんがな。(笑)
タマラ王女 / 藍羽ひより
カワイイ。
鼻筋通った美人の娘。
そしてセリフ回しもキュート♡
厩舎?に入って行っちゃう所ら辺のやり取りで、女官長(水乃ゆり)に注意されたりして返事をするときの「はぁ…い」が可愛すぎました。
新人公演はスカステでダイジェストを観ただけですが、ますます新人公演も観てみたくなったので、東京公演の配信を楽しみに待ちたいと思います!
その他の人々
なんと言ってもみきちぐさん(美稀千種)の物乞い、インパクトありますね。
配役が発表されたとき「物乞い!?」と、頭の中が?になりましたが、なるほど、ストーリーテラーの役割を担っていたのですね。
でも、幕開きの「誰もいなくなった」廃墟の場面が、ディミトリとルスダンの愛の物語からどれくらい時間が過ぎているのか、分かりにくいですね。
というか、分からない。(笑)
物語的には、ディミトリに救われてルスダンはトビリシに戻ったところで終わっています。
この物乞いさんは何歳まで生きたのか?
因みにルスダンはこの物語ののち、50歳くらいまで様々な苦難のなか生き抜いています。
もうひとり印象に残ったのは、アヴァク・ザカリアンのパパ、イヴァネ・ザカリアンを演じたヒーロー(ひろ香祐)です。
すっかりベテランになり、良いお芝居してくれますよね、彼女は。
もう少し息子アヴァクをちゃんと導いてくれると良かったのですが…。(笑)
まとめ
ちょっと長くなりましたので、『JAGUAR BEAT~ジャガービート~』の感想は次回へつづく、にしますね。
噂通りのジャガーさんでした。(笑)
とりあえず、本日はディミトリに感動しすぎてタイムオーバーです。。。
ま、何はともあれ、『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』は最高傑作でしたね。
心が震える瞬間が何度もあって、いろいろ考えさせられました。
そして、涙無くしては観られません…。
劇場で観たかったな~。
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