宝塚の至宝、礼真琴のこれまでの舞台を振り返るシリーズ。
4回目の今回は、配属から2作目の2010年星組公演『ハプスブルクの宝剣 -魂に宿る光-』をお届けします。
この作品は藤本ひとみさんの同名歴史小説が原作で、ストーリーや登場人物などの設定はほぼ原作を踏襲していますが、ミュージカル化するに当たって脚本・演出を担当した植田景子先生により若干手が加えられているようです。
「ようです…」というのは、私は当時もそれ以降も原作を読んでいないので、何がどう原作と異なっているのかわかりません。(笑)
この作品で当時話題になったのは、何といっても、心地の良い素敵なメロディを奏でる主題歌ですね。
ハンガリーの作曲家、シルヴェスター・リーヴァイ氏が作曲を担当しています。
リーヴァイ氏といえば、1996年の宝塚初演以来、宝塚や東宝で何度も再演を繰り返しているミュージカル『エリザベート』や、こっちゃんのトップ初公演となった『モーツァルト!』などの作曲者。
それ以外にも『レベッカ』『マリーアントワネット』『レディ・べス』など、数々のミュージカルを通じて日本でもお馴染みとなりましたね。
彼はウィーンのシェーンブルン宮殿(アパートとして貸し出されている部屋)に暮らしていることでも知られています。
『ハプスブルクの宝剣 -魂に宿る光-』予備知識
あらすじ
舞台は18世紀前半のヨーロッパ。ドイツ、フランククフルトのユダヤ人居住区で生まれ育ったエリヤーフー・ロートシルトは、その出自ゆえ、自分の未来や、迫害と差別の歴史を持つユダヤの未来を切り拓こうと、大きな理想を胸に抱いていました。
大学を卒業したエリヤーフーは、やがて「ユダヤ教の律法」のドイツ語翻訳という革新的な作業を成し遂げ故郷へ戻って来るのですが、そこで彼を待ち受けていたのは、閉鎖的な因習に固執するユダヤの仲間たちからの激しい拒絶でした。
エリヤーフーを理解する者は誰もおらず、絶望を抱えたままアルテ橋へと向かったエリヤーフーは、そこでかつての恋人、アーデルハイトと再会します。
いまも変わらぬ愛を確かめ合う二人でしたが、由緒ある家柄の娘であるアーデルハイトには、すでに両親が決めたモーリッツという婚約者がいたのです。
エリヤーフーとアーデルハイトの関係を知ったモーリッツから決闘を挑まれたエリヤーフーは、その結果、不本意ながらも彼の命を奪ってしまいました。
時は流れ、オーストリアの都ウィーンでは、ヨーロッパ随一の権勢を誇るハプスブルク帝国の君主カール6世が、長女マリア・テレジア(テレーゼ)の娘婿として、ロートリンゲン公国からフランツ・シュテファンを迎えていました。
ある日の宴、カール6世は名将オイゲン公からハプスブルクの力となり得る非常に優れた若者を紹介されます。
名はエドゥアルト・フォン・オーソヴィル。彼こそが、それまでの過去の全てを捨てユダヤと訣別したエリヤーフーです。
さきの決闘で傷を負い瀕死の状態だったエリヤーフーを、フランツの側近であるジャカンが見つけ命を救っていたのでした。
フランツはエリヤーフーの出自をすべて知った上で自分の臣下として召し抱え、彼に「エドゥアルト」としての新しい人生を与ました。
フランツはテレーゼと結婚した際、隣国フランスからの圧力で自国の領地ロートリンゲンを手放すことを余儀なくされましたが、祖国と愛するテレーゼとの間で悩んだ末に、祖国を捨てテレーゼとの結婚を選びました。
ゆえに、フランツは自分と同じく帰るべき場所を失ったエドゥアルトの孤独に共感を覚えていたのです。
そして一方のエドゥアルトもまた、過去のすべてを捨て、命の恩人であるフランツと共にウィーンで真のオーストリア人となる決心をます。
そんな折、フランツから妻のテレーゼを紹介されたエドゥアルトは衝撃を受けます。彼女があまりにもアーデルハイトに似ていたからです。
捨てさったずの過去の記憶が一気に蘇り、激しく心を揺さぶられるエドゥアルト。
一方のテレーゼは、エドゥアルトの瞳に宿る鋭く激しい炎に不吉な予感と、けれどもなぜか強い興味を掻き立てられていました。
やがてカール6世が崩御し、広大なハプスブルク領が娘のテレーゼに継承されました。若き女性君主の誕生は、ヨーロッパに激動の嵐を巻き起こすことに。
領土の拡大を計る近隣諸国が一斉にオーストリアに圧力をかけてきますが、ウィーンの宮廷には因習に凝り固まった老いた家臣たちしかいませんでした。
フランツは、今こそエドゥアルトの力が必要だと考えます。
命を受けたエドゥアルトは、この四面楚歌の現状を打破する為に、長年ハプスブルクの統治に反発し続けてきたハンガリーを味方に付けるという奇策を打ち立てます。
周囲の反応は冷たいものでしたが、エドゥアルトは見事にその役目を果たし、ハンガリー貴族グレゴール・バチャーニらの協力を取り付けることに成功したのでした。
テレーゼはエドゥアルトの尽力に感謝し必要としつつも、彼の出自を知ったことで動揺し彼を認めることができずにいた。
そんなテレーゼとフランツとの間で苦しんだエドゥアルトは、しばらくの間ウィーンを離れることを申し出て、オーストリア軍とともに各地を転々とします。
そうしているうちに、エドゥアルトはプラークで街を追放されるユダヤ人たっちに出くわし「どれほどハプスブルクの為に闘おうとも自らの居場所なない」「過去から解き放たれることはない」と気づくことに。
魂の拠り所を求めてさまようエドゥアルトが、最後に見出した光とは…。
主な配役
エリヤーフー・ロートシルト / エドゥアルト・フォン・オーソヴィル:柚希 礼音
アーデルハイト / テレーゼ(マリア・テレジア):夢咲 ねね
フランツ・シュテファン:凰稀 かなめ
フクス伯爵夫人:京 三紗
サヴォイア公子オイゲン:一樹 千尋
モシェ・ロートシルト:英真 なおき
サラ:万里 柚美
皇帝カール6世:にしき 愛
ズィンツェンドルフ伯爵:美稀 千種
リディア:百花 沙里
ジャカン:涼 紫央
ドロテーア:琴 まりえ
ハラッハ:美城 れん
シュタレムベルク:天霧 真世
フンク夫人:梅園 紗千
ラディック・ジリンスキ:彩海 早矢
ヨハン・ゲオルク・フンク:天緒 圭花
ラビ・ダウィド / バルテンシュタイン:鶴美 舞夕
グレゴール・バチャーニ:夢乃 聖夏
ヘッセン・カッセル方伯 / ケーニヒスエック将軍:水輝 涼
アンドラーシュ・オルツィ:紅 ゆずる
ヤコブ:碧海 りま
モーリッツ:壱城 あずさ
アムシェル・モシェ:美弥 るりか
ズィーゲル:如月 蓮
キンスキー侯爵:汐月 しゅう
アブラハム:天寿 光希
オルガ:稀鳥 まりや
ユーゼフ / 特使:大輝 真琴
マリア・アンナ:音波 みのり
カール・アレクサンダー・フォン・ロートリンゲン:真風 涼帆
待従長ヨハン:夏樹 れい(新人公演: 礼 真琴)
ゲオルク・カイト:十碧 れいや
急使:漣 レイラ (新人公演:礼 真琴)
サムソン:麻央 侑希(新人公演:礼 真琴)
こっちゃんを探せ!
この作品でのこっちゃんは、主人公エリヤーフ(柚希礼音)の学友、従僕や兵士といった大人数のうちのひとりで登場することがほとんどです。
でも、そこそこ「こっちゃん、み~つけた!」とわかるような場面になっています。
第1場a パドヴァー大学-(a)希望の書 (学友)
10人の学友たちが出てきますが、台詞こそないものの、けっこう画面に映り込んでいるのでわかりやすいですね。
みんなで歌っているときの後列の下手から2番目がこっちゃんです!
この場面にはキキちゃん(芹香斗亜)やミッキー(天寿光希)も同じ学友で登場しています。
感想はただ一言、こっちゃんカワイイ!(笑)
第1場c パドヴァー大学-(c)旅立ち (学友)
エリヤーフが旅立ちの準備をするときに、上手端にい学友・こっちゃんが身支度のお手伝いをしています。
こっちゃんのちえちゃん(柚希礼音)を見つめる眼差しが、学友ちゃうやろ~ な件。
私の眼には「ちえさん!♥」という、こっちゃんの心のつぶやきが聞こえました。(笑)
そして、(当たり前ながら)お芝居の流れではありますが、ちえちゃんエリヤーフの視線が学友こっちゃんに向けられる、ほんと~に一瞬、時間にして0.03秒くらいの視線が、これまたたまらなくドキュン♥でした!(笑)
第4場a ウィーン-王宮-(a)大広間 (従僕)
銀橋に立ち並んで歌う従僕たち。
こっちゃんは上手から2人目、燭台を持って歌っています。
なんの特徴もない従僕ですが、、、一つひとつの動きに注目してマジマジと見てしまいました。
本舞台へ移動してからは、華やかな輪っかのドレスや宮廷服を身にまとった貴族たちの後ろ、燭台の隣でひたすら立っているだけという…。
因みにこのとき既にゆりかちゃん(真風涼帆)は、りかちん(凰稀かなめ)演じるフランツの弟として、煌びやかな宮廷服を着て宴に参加していました。
その姿を直立不動で背後から眺める従僕のこっちゃん。
そんな二人がともにトップスターとして肩を並べ、コロナ禍に苦しんだ宝塚の屋台骨を支えていたんですね~。
とっても感慨深いです。
第5場b 野望(b)三面鏡 (家臣)
場面転換のわずかな場面で、ちえちゃんエドゥアルトに銃を持って来る家臣としてこっちゃん登場。
ちえちゃんが銃を手に取ると、会釈をして去っていくこっちゃん。
この会釈がまたキレッキレ。(笑)
ポーカーフェイスで去ってゆくこっちゃんに、思わず心の中で拍手!
第8場 閣議-老臣たち-(従僕)
老臣に最初にフルーツ持って来るのがこっちゃん?
顔があまりにもまん丸で…。
鬘のせいですかね。
第9場 ハンガリー-草原-(マジャール兵)
けっこう長いナンバーをマジャール兵たちが踊っていますが、ここでは顔の判別がつかなくて特定できませんでした。
引き映像で見ると、こっちゃんらしきダンススタイルの人はいるのですが、顔が確認できず。
でも、そのナンバーのあとで、ちえちゃんエドゥアルトとマジャール兵のともみん(夢乃聖夏)、べにちゃん(紅ゆずる)、あかし(彩海早矢)が話をしているうしろの方で、酒カップ片手に女と遊ぶこっちゃんを発見!(笑)
あかしが「プロイセンなんぞ、俺たちマジャール兵の手にかかればイチコロだ!」って言っているときの後ろにちらりと映り込んでます。やっぱり丸いね。(笑)
第13場 戦場-最後の決戦-(マジャール兵)
オーストリア兵、プロイセン兵、マジャール兵が入り乱れて戦いのダンスを舞っていますが、マジャール兵たちが中央で踊っているので目立ちます。
でも、確実にこっちゃんを認識できるのは、戦いの踊りが終わり、あかしが撃たれ、りかちんフランツがうたったあと、ちえちゃんエドゥアルトが出てきて「ここは私が引き受けた、はやく将軍の元へ」と言っている場面くらいかな。
ちえちゃんの後ろにガッツリ映り込んでますね。ぶっちゃけ、これはまんま女の子ですね~。
なんかカーリーヘアの西洋人形みたいに見えます。
全体的な感想
こっちゃん、まるい!(笑)
ちえちゃん、頬がこけちゃって… トップの重圧、試練ですね。
ゆりかちゃん、きれいなお衣装着て目立つけど… あれ? そういえばしゃべったっけ?(笑)
さゆみちゃん、変わらないね~、いろいろ…。
りかちん、お歌が… 聞いていてドキドキしてしまいました。
この作品の魅力は主題歌!
なにをおいても主題歌!!
この主題歌が私は大好きなのです。
ラスト近くで大人数でこの主題歌をコーラスするシーンは何度見ても感動的ですね。
まとめ
まだ研1なので、まん丸なのは仕方がないですかね。
もともとお顔の輪郭が丸形だし。
そしてまだまだまだ女の子。
ここから、こっちゃんがどうやって「男役」に変貌していくのかが、あらためて楽しみになりました!
でも、こっちゃんが注目されるきっかけになったのは、ロミジュリ初演の「愛」、つまり娘役でした。(可愛かったですよね~♥)
この公演の次は「ロミジュリ観るぞ~!」とワクワクしながら舞台歴を確認してみたら …
まだその前に全国ツアー『激情』『BOLERO』に出演していましたね。
もうしばらく超絶キュートな「愛」ちゃんはおあずけか。
では、また次回。
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