2023年、明けましておめでとうございます。
今年は何やら宝塚歌劇も色々動きがありそうな臭いがプンプンしておりますが、どんな変化があろうとも、宝塚とともに楽しい時間を過ごしていけたらと思っています。
さて、新年早々、礼真琴の舞台を振り返るシリーズ第73回目です。
今回は礼真琴&舞空瞳お披露目公演『眩耀の谷〜舞い降りた新星〜』を振り返ります。
この作品、当時は「プレお披露目と、作品が逆じゃない!?」などと言われていましたね。
たしかにMOZARTを大劇場でガッツリ見てみたかった気もしますが、作品の規模的にはMOZARTはやはり小箱向き。
謝先生の独特な世界観を持つ『眩耀の谷』は、お披露目公演としては「パッとしない」感は否めませんでしたが、幻想的な雰囲気が美しかったですね。
謝先生ワールド。
『眩耀の谷〜舞い降りた新星〜』予備知識
あらすじ
紀元前の中国大陸に西の地からやってきた流浪の民 “汶族”。
彼らは、彼らの神 “瑠璃瑠” の使いに導かれ、豊かな自然と土壌を持つ “亜里” という地に辿り着き、その地に「汶」という小さな国を築きあげる。
紀元前800年頃、勢力を拡大していた周の国が汶族の首領・麻蘭を征討し、汶を攻略。
汶族は周国の統治下に置かれることになった。
その美しい亜里の地に、数々の戦の手柄を持ち麻蘭征伐の勇者と称えられる管武将軍と共に、新しく大夫となった丹礼真が赴く。
管武将軍は「汶族の残党が潜んでいる」という名目で、丹礼真に汶族の聖地と呼ばれる “眩耀の谷” の探索を命じるが、周国王宣王の本当の目的は谷にある黄金であった。
そんなこととは知らない礼真。
敬愛する将軍からの命令に従い、ある日、神の使いの幻を追ううちに、一人の汶族の男と遭遇して眩耀の谷を見つけ出す。
しかしその男と、そこで出会った汶族の舞姫・瞳花とにより、礼真の運命は思いもかけぬ方向へと流されていく。
母国を信じる礼真に待ち受ける試練とは、そして希望とは…。
主な配役
丹礼真:礼真琴
瞳花:舞空瞳
宣王:華形ひかる
母:万里柚美
パジャン:美稀千種
パジャンの妻/巫女:白妙なつ
慶梁:天寿光希
敏麗:音波みのり
百央:大輝真琴
丞相/父:輝咲玲央
村の女:紫月音寧
アルマ:夢妃杏瑠
管武将軍:愛月ひかる
興陽:漣レイラ
タカモク:ひろ香祐
ヌル:紫りら
謎の男:瀬央ゆりあ
ヨナ:音咲いつき
隊長:拓斗れい
テシャ:朝水りょう
金光竜:桃堂純
カイラ:綺城ひか理
春崇:有沙瞳
クリチェ:天華えま
ブリ:夕渚りょう
ウルマン:天希ほまれ
ザファル:湊璃飛
王后:華雪りら
瑛琳:小桜ほのか
ケトマ:遥斗勇帆
ウラク:桜庭舞
イムイ:極美慎
プラト:碧海さりお
テイジ:天飛華音
神の使い:水乃 ゆり
眩耀の谷〜舞い降りた新星〜
地味だけど華やか
アジアの時代物は、どちらかというと「なんとなく地味」なんだけど、謝先生の演出で華やかな雰囲気が広がります。
民族衣装で舞う男女の群舞は見応えがありますね。
欲を言うと、幕開きのナンバーにこっちゃん(礼真琴)登場場面が欲しかったかな。
語り部でみほちゃん(有沙瞳)が登場しますが、なんと可愛らしい!
いつも思いますが、みほちゃんってホントいろいろな役を自在に操る万能な娘役さんですよね~。
そしてこっちゃんが登場するわけですが、、、少々地味な登場。
疑うことを知らない、真っすぐな、希望いっぱいのハツラツとした若者の雰囲気がよく伝わってきます。
トップを食う2番手の貫禄
この公演から正式に星組生として2番手に就任した愛ちゃん(愛月ひかる)。
やはり予想していたとおり貫禄では敵いませんね。
こっちゃんトップの下では、2番手というよりどうしても別格スターの貫禄が漂いますね。
こっちゃんの支えにはなってくれていますが、この配置が「大人の事情」としか思えないミスマッチも改めて強く感じてしまいます。
でも、役柄としてはナイスな配役。
愛ちゃん管武将軍と、その将軍に憧れ希望に溢れるこっちゃん礼真との関係性に妙な説得力が生まれていて、とても自然な空気の流れを感じました。
これも謝先生の巧みな演出力でしょうか。
星にも寿命があるのですよ
お披露目公演なので、これからの星組を担うこっちゃんに向けたメッセージが台詞に込められていましたね。
礼真の亡き母を演じた、当時の組長、万里柚美さんの台詞です。
「れいしん、星にも寿命というものがあるのですよ。(こんちゃんのほうを手で示し)新しく生まれる星、(遠くを示し)消えてゆく星」
お披露目らしい、温かい、新トップスター礼真琴へのメッセージ。
でも、公演当時はそう思えたこのメッセージも、4年目を迎えて卒業が現実のものとして見えてきた今聞くと、複雑。
「新しく生まれる星」よりも「消えてゆく星」のほうに感情がフォーカスされてしまいます。
寿命があるからこそ、消えゆく前に輝きを増す星たち。
その限りある時間の中で、精いっぱいの光を放ち自らの存在を輝かせている星たち。
もう、なんかね、95期のこれからが心配でしかたがないのですよ。(苦笑)
「瀬央ゆりあ」 の立ち位置
謎の男(瀬央ゆりあ)と遭遇したときの、こっちゃん礼真の驚き方がコメディ。(笑)
なんともこっちゃんらしくて可愛い♡
この作品のキーマン、謎の男を演じるなおちゃん(瀬央ゆりあ)がいいスパイスになっていますね。
個人的には、愛ちゃんよりもなおちゃんの役のほうがもうけ役だなぁと初見のときに思いました。。。
印象に残ります。
当時のこのなおちゃんの扱いは、この先に期待を持たせるものではありましたが、一方で、瀬央ゆりあという中堅スターの存在を、劇団はどこに位置付けようとしているのか、読み切れないままでもありました。
個人的には、
少なくともこの頃にはすでに、愛ちゃんがトップになることはないだろうことは予想できましたし、なおちゃんがいずれ花組のマイティ(水美舞斗)と同様に2番手の扱いを受けるのではないかと期待していたのですが … そうでもなさそう … な気配。
なおちゃん演ずる謎の男の好演は、あいちゃんと共にこっちゃんのお披露目を支える大きな力になっていましたし、こっちゃんとのハーモニーも息もピッタリ。
このころは(愛ちゃんファンには申し訳ないのですが … )もう一歩先に見ていた「新しい星組」を妄想してワクワクしたものです。
でも、結果として愛ちゃん退団後もずっと曖昧なまま。
気が付けばアリちゃん(暁千星)が組替えでやってきて、もはやアリちゃんへバトンを渡すための時間稼ぎでしかない気配さえ漂い始め …。
やっぱり、ここへきての歌劇表紙、全ツ2番手でっかくポスターイン!は、劇団からのせめてもの餞別なのか!?と…ね。
2023年、95期スター軍団の牙城に何が起こるのか「恐怖」でしかないです。
ほらね、またネガティブ・ワールドへ堕ちてゆく2023年、作品の振り返りより感傷に浸ってます、もはや。(笑)
なこちゃん、個性いかせず
なこちゃんですが、お披露目公演の役柄としては少々ハードルが高かったかな、という印象を受けました。
まだ芝居が荒く、目が見えないという設定も演じ切れていないかな、と。
この若さと幼さで、いきなり「母」という設定は難役でしたね。
単純にこの芝居の中の瞳花-なこちゃんは母には見えなかったし、設定自体に違和感がありました。
もうちょっと設定がどうにかならなかったかな~。
プレお披露目の『モーツアルト』では、荒削りながらも等身大のなこちゃんがイキイキと演じていただけに、この作品でお披露目というのはなこちゃんの個性が生かしきれず、もったいなかったですね。
作品との相性はだいじ。
ことなこのドハマり作品『ディミトリ―』に出会った後なので、なおのことそう思います。
とはいえ、じゃぁお披露目で『ディミトリ―』を上演していたとしても、いまのような絶賛作品には到底ならなかったでしょうから、すべてはタイミングでしょうかね。
役者の成長と信頼関係が、あらたな名作を生み出す…
日本語の使いかたが気になる件
これは、この作品に限らずですが、、、
とっても気になる日本語の使い方が、宝塚歌劇の舞台でよく出てきます。
相手が言ったことに対して「と、申されますと…」と聞き返したり、「あなたの申された通りでございます」と話したり。
この作品でも、なこちゃん瞳花がこっちゃん礼真に向かって「あなたの名は、れいしん、と申されましたね?」と語りかける場面があります。
この「申される」の使い方、とっても気になりませんか?
「申す」というのは謙譲語、つまり自分がへり下って相手に伝えるときに使う言葉です。
例えば「さきほど(私が)申しましたとおり …」とか「(私が)そのようなことを申しましたでしょうか?」など。
相手の言ったことを聞き返す際は尊敬語「おっしゃる」を使用するのが正解。
さっきの台詞でいうならば、「あなたの名は、れいしん、とおっしゃいましたね?」です。
申されましたね?なんて使い方、、、気持ち悪くて。
確かに、ず~っと昔には「言う」の丁寧語として「申す」ということばが使われたこともあるようですが、現代においては謙譲語と尊敬語の混同、誤用です。
この使い方、宝塚歌劇の作品のなかで本当にたくさん誤用されていて、ものすご~く気になります!
日常の中で誤用されがちなのはまぁ仕方がありませんが、演出家には正しい日本語を台詞に乗せてほしいな~と、この誤用表現を聞くたびに思います。
丁寧な言葉にしようとして「申す」を使っているだけな感じですよね?
謙譲語(自らをへりくだった言い方)と尊敬語(相手を敬った言い方)の使い分けに疎い。
「あなたはそう申されますが、、、」的なね。(正:あなたはそうおっしゃいますが、、、)
私(とか立場が下の人)から申す、あなた(とか目上の人)がおっしゃる。
様々な作品を観ながら、ず~っと長い間気になっていたんです。(笑)
この作品にも登場してたので、ここぞとばかりに長年のモヤモヤを吐き出してみました!
すみません、礼真琴を振り返ることから脱線しました。
ちなみに、『ディミトリ』でも使われていて、モヤモヤしたような気がします。(1度しか観ることができていないので、記憶が定かではありませんが …)
まとめ
3年前のお披露目公演、コロナで公演中止や日程変更など色々な意味で思い出深い作品でしたね。
お披露目公演としては少々地味な印象のこの作品、舞台全体がず~っと薄暗いのが少々気になりましたが、これからも星組は大丈夫!と思わせてくれるこっちゃんの安定感でした。
さて、次回はお披露目のショー『Ray-星の光線-』を振り返りたいと思います。
